第2話役立たずのスキル。

シャイと話をしなくなって、そのシャイと常に一緒にいるようになったミーアともあまり話をしなくなっていた。


遠巻きに、シャイと、ミーアを見ている。


そんな日々が一年続き。




「今日は、『洗礼の儀』の日である!」


大きな歓声が上がる。


教会の中で、ゆっくりと司祭さんが笑う。


「今まで今日を楽しみにしていたと思う。今日の結果は、通過点に過ぎない。得られたスキルを十分に理解し、これからを生きて欲しい」


ゆっくりと、両手を広げる。




「さぁ。洗礼を始めよう!」






「やったぁ!俺、『狩人』だ!」


鍛冶屋の同級生が、笑いながら祭壇から降りて来る。




「じゃあ、次は僕だね」


シャイが、祭壇の前に歩いて行く。




そして。


彼が祈った瞬間、世界はまばゆいばかりに光りを放つ。


そして、司祭さんは、、


泣いていた。




「おお。おお。ついに、ついに、まさか、私がこの称号を、このスキルを言う日がくるとは、


おお。神よ。ありがとうございます。私にこんな大役を。そして、彼を遣わせていただいた事に。感謝します」


号泣する司祭さん。


全員が、呆気にとられていると。


「この子のスキルは、『聖賢』である!」


司祭さんが、大きく声を上げる。


その瞬間、村全体が、振るえるほどの歓声が巻き上がったのだった。




シャイア様が持っていたというスキル『聖賢』聖なる賢者といわれるそのスキルは、魔法剣士である事の証明であり、『聖剣』が使え、『聖』魔法が使えるという、最強スキルだ。


勇者となるべき者が持つスキル。




「僕が、、本当に?」


シャイが、困った顔をして、自分の手を見ている。


「やったね。さすがシャイ君!」


ミーアが嬉しそうに笑っている。




その姿を見るのも悔しい。


「じゃあ、次、私かな」


ミーアが、祭壇の上に上がる。




そして。彼女が祈ると。




再び、光が集まり。ミーアを守るかのように光が舞い踊り始める。


「おお。おお。伝承の通りだ。そうであろう」


司祭さんが、歓喜に震えている。


「彼女のスキルは、、そう『聖魔士』だ!」


おお。と再び歓声が起こる。




『聖魔士』『聖賢』を守る、聖魔法使い。


つまりは。


「聖女さまだ」


「聖女さま、、、」




全員が、手を合わせてミーアを拝み始める。




「ミーア。君は、聖女、、なのかい?」


「うん。シャイ君を守ってあげるからねっ!」


ミーアが可愛い顔をシャイに見せている。




二人が凄いスキルを持っている事が分かり。


僕は、わくわくしながら、祭壇へ上がる。


僕が祈りをささげた時。




目の前に、巨大な、本当に巨大な木が見えた。


全てを包み込み。


全てを呑み込み。


全てを支え。


全てを貫き。


全てを育み。


全てを森へと返す。


七色に光る不思議なその木は、僕の目の前で僕に向かって枝を伸ばす。


その魔力が僕へと流れ込む。




ふと、一人のぼっちの青年が、木刀を持ったまま、笑った気がした。




「ふむ、、初めて見るスキルだが、、」


司祭さんが、すごく困った顔をしている。


「過去の文献にすら載っていないと思うのじゃが、、とりあえず、そなたのスキルは、『枝召喚』だ」


その言葉に、村人全員が思わず吹き出す。




「枝、、召喚? 枝を出してどうするんだよ」


「焚火でもしろってか?」


「いやいや、枝は、集めれば家も作れる、、かもしれないぞ」


そんな声が聞こえて来る。




「今回の儀式はこれにて終了となる!」




その声を、僕は茫然と聞いていたのだった。










「聞いたぞ」


家に帰るなり、お父さんは僕の顔を見て複雑な顔をする。


「そうねぇ」


おかあさんまで、困った顔をしていた。




「はっきり言ってやったらどうだ?」


お兄さんである、アツが、少し困った顔のまま、僕の顔を見ていた。




家族の皆の顔を見て、僕は、自分が本当の外れスキルを手に入れてしまった事を実感してしまうのだった。






「エル。申し訳ないが」


お父さんが困った顔のまま切り出す。


僕がお父さんを見ると。


「『枝召喚』は、はっきりいって、ここでは役に立つ事は無い。もし、お前が良かったら、13歳になったら、王都へ行ってみたらどうだ?」


真剣な顔だった。


お母さんまで、真剣な顔をしている。




「ここにいたら、ダメ?」


僕は小さく呟く。


しかし、両親の表情は硬いままだ。


「それがな、、、言い難いんだが、、、、」

お父さんの声が、すこし苦い気がする。


両親の雰囲気から、僕の仕事はこの村には無い事を、役立たずと言われる現実を突きつけられてしまうのだった。


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