超勇者になってやると意気込んでいたのに、「枝召喚」ってなんですか!?そもそも、「枝(えだ)術!?」って盆栽でもしろって事ですか?!聖女様からも無視されて、最底辺突破ですか?!最強外れスキルの最強勇者。
こげら
第1話枝は、世界を癒す
「シャイア!」
突然に降って来た、翼を持ったオーガを、一刀両断にする戦士。
「まだ来るぞ!」
「無駄な殺生はやめろって、言っただろうが!」
俺は、手に持った木刀で、敵を殴る。
「殺さなきゃ、殺されるだろうが!」
きらめく剣が、炎を吐き始めていた竜の首を跳ね飛ばす。
「それが、それが、ヤバイんだよっ!」
俺は叫びながら、倒れそうになっている竜の首を叩く。
その途端、空中に飛んでいた竜の頭が時間が巻き戻るように首にくっつき。
何事も無かったかのように、竜は首を傾げ。
戦場から飛び去って行く。
「どうせ、操られているだけなんだ!あいつを倒せば、全部終わる!」
俺が木刀で示したのは、骸骨のマスクをかぶった男。
「ふふふ。私を止めれるとでも思っているのか?混沌。恐怖。憎悪。すばらしいじゃないか!殺し合い、最強を求めて、戦い合う。最後の一人になるまで、戦う事が、この世界の理だろう!」
「そんな事は無い。全ての生命は、一つに戻り、一つの海となる。そこに、悪も、善もありはしない」
「ふふふ。何を言うかと思えば。捨てる命と、生まれる命。そして、はじき出される命があるのだ」
骸骨マスクの手が横に振られ。
俺の手がちぎれ飛ぶ。
「おい!!!」
シャイアが叫ぶが。
「これくらいで、命を吹き消せると思うなよ」
俺は無事な手を伸ばす。
「命よ!この世界に、祝福を!『枝召喚』!(原始の木)!」
枝が俺の手に握られ。
失った腕が時間が巻き戻るようにくっつく。
「命は、命の形は誰にも奪い取る事は出来ない。お前自身の命もな!」
「英雄気取りの、愚か者めが!」
骸骨が叫ぶ。
その声に、余裕が無い。
「シャイア。後は頼んだ」
俺はそれだけ言うと、枝を掴んだまま走る。
「枝えだ術! 原木回帰!」
「ばかっ!」
原始の木が光り。
俺と、骸骨の男を包み込み。
消え去っていったのだった。
「シャイアって、やっぱりすごいよなぁ」
英雄として、勇者として全ての村や町に立っている銅像。
その前で、僕は笑っていた。
この世界を救った勇者。たった一人で悪の王ともいえる魔王を倒したと言われている。
その腰に携えているのは、立派な剣。
「また、シャイアの像の前にいたの?」
ふと声をかけられて後ろを振り返ると、金髪のふわふわした髪の少女が笑っている。
金色に光る目が優しくきらめいていたりする。
「ミーア。いいだろ?俺も、シャイアみたいになるんだから」
僕は、像を見上げて胸を張る。
来年。
来年、スキルを授けてもらえる、洗礼の儀式がある。
「また言ってる。シャイアは、『聖賢』のスキルでしょ?聖剣と、聖魔法の使い手。そんなスキルを持てたら、本当に、お嫁に行ってあげるよ」
にっこりと笑うミーア。
あまりの可愛さに、おもわずその場で見とれてしまう。
「何じっと見てるの? エル。ほら、教会のおじいさんが呼んでたわよ?また畑仕事、途中で抜け出して来たんでしょ」
ミーアの笑い声に、僕は思わず顔を赤らめてしまう。
幼馴染のミーアは、すごく可愛い。
金髪の髪はふわふわで、すっごく触り心地がいいし。
けど、僕自身は。
黒髪の、黒目。
この村では、そんな子供は僕だけだ。
お父さんとお母さんもそんな髪や目の色じゃない。
「先祖返りかもな」
お父さんからは、そんな事を言われていた。
僕は、慌てて教会へと走っていくのだった。
村の子共たちと遊んだり、ミーアと一緒に走り回ったりした半年。
一人の男の子が村に迷い込んで来た。
「ここは、、、魔法と、剣の世界?」
そんな事を言い出す変な子だった。
僕と同じ年なのに、剣の腕も、魔法の腕も凄くて。
「シャイ君、すごい!簡単に倒せるんだ!」
迷い込んで来た獣をあっさり倒したりして、ミーアがすごく喜んでいたりする。
僕は、なんだかおもしろくなくて、シャイとはまったく話をしなくなっていたのだった。
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