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大型貨物魔導船の着陸作業を無事に終えたリットファームの魔法港は、曇天のもと、次の船の着港を待つ。
管制塔でマイクの前に座るのは、貿易監査局から派遣されている女性管制官。
キリッとした顔立ちで、いかにも有能そうな雰囲気の女性である。
次の船は、当局の巡回警備船だ。
勝手知ったる同属ならば指示をしやすいだろうと、リラックスして着港を待っていた。
そんな彼女のもとに、思いがけない報せが届く。
「えっ⁉ 鉱石市場通りに、海賊があらわれた⁉」
貿易監査局はその名のとおり、宇宙での貿易を司る機関だ。
異世界間における交易のトラブルをふせぎ、公正な取引市場を保つのが彼らの役目。
そんな彼らにとって、宇宙にはびこる〝海賊〟は、許しがたい存在だ。
やつらは、平気で関税をくぐりぬけたり、認可されていない物資を運んだり、商人から物品を強奪までする。公正な取引の場を乱す悪賊だ。
「でも、確実に捕まえられるでしょう。しばらく離陸船はありませんでしたから、賊の魔導船はまだ港に停泊中のはずです。
すぐさま船を特定して差し押さえを……、って、え⁉ すでに離陸を⁉
港を介せず飛び立つなんて、よほど手練れの魔法士のようですね……」
実際は魔法士ではなく魔術師だが、そこまで詳しい情報は伝わっていないらしい。
「すでに宇宙に出られてしまったら、いまから追っても間に合いませんか……。ああ、なんてこと。みすみす賊を逃すなんて。
……いえ、ちょっと待ってください。次の着港予定は、たしか……」
入出港の申請リストを確認する管制官。
次の着港予定は、監査局の巡回警備船でないか。
当局の警備部に所属する船だ。貿易連盟の加入世界を巡回……もとい巡界している。
これから着港予定ということは、その
これは賊を捕まえる、またとないチャンス。
女性管制官は、たちまち凛々しい顔つきを取り戻す。
そして、近くにいた仲間に指示を出した。
「すぐに警備船に通信を! ただちに周辺を捜索、リットファームから飛び立った魔導船を見つけだして、
当局の威信にかけて、悪徳な海賊連中を捕まえるのです!」
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