閑話1 目には目を
天使長ミカエルは、バビロン王朝のハムラビ王こそ紀元前10世紀以前の最高の人と考え、天界に呼びつけた。
「ハムラビよ。そなたに2024年の全ての人を導く自信はあるか?」
ハムラビは自信に満ちた態度で答える。
「もちろんでございます。私達バビロンの築き上げた『目には目を、歯には歯を』の発想は現代こそ必要なのでございます。21世紀は身分の違いもなく、私達の時代より判断がやりやすいと思います」
ハムラビの作った法典は、彼我の身分の軽重によって応報の度合いが異なっていた。
しかし、現代では奴隷などの劣る身分も、貴族のような上位身分も撤廃されている。内心はともかく、外に向かって不平等を謳う者はほとんど存在しない。
ミカエルは満足し、主にこう語った。
「バビロンのハムラビ王こそがふさわしい人であると考えます。この増えすぎた人を統御するにはハムラビ法典の論理を全面的に採用……」
ミカエルが言い終わる前に、神はファン・マヌエル・マルケスがマニー・パッキャオをぶっ倒したよりも美しい右のロングフックをミカエルの左テンプルにお決めになられた。
そして、倒れ伏すミカエルに言われた。
「馬鹿者! 単純な応報刑で世界が良くなるなら苦労はせんわ! インターネットの誹謗中傷などはどうやって対処するのだ? 世界は複雑になりすぎておるのだ!」
しかし、神は震えあがるハムラビには優しく言われた。
「しかし、主義主張の正義、民族の正義などをうるさく唱えすぎる昨今、まず等しく対価を支払うという発想も必要であろう。お主が必要となることはあるかもしれぬ」
かくして、ハムラビ王は暫定候補者の席に着くことになった。
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