異世界転生するらしい
そして、その後屋上までダッシュで駆け抜けた俺は、誰にも邪魔されることなく、屋上からのジャンプに成功した_______はずだったのだが……目が覚めたらこんな殺風景なところに居た、と。
それにしても、これ以上先に進む気が無いから自殺した人間に対して「先に進むか」なんて事を聞いてくるなよ。世界の何処かにはきっと俺以上に「先に進む」気のある人が沢山いるはずだ。
何故、寄りにもよって俺にそんな事を聞くのだろうか。
※答え《アンサー》。貴方は確かに貴方は次を放棄しましたが、死ぬ間際にもっと「違う生」を求めました。
ノイズが走った後に、画面が変わる。
※一瞬の感情のゆらぎでしたが、貴方は確かに死ぬ直前に『死にたくない』と願ったのです
……記憶にないな。確かに、次はもう少しマシな人生でありますようにとは願ったが、「死にたくない」なんて言った覚えがない。確かに何の意味も無く死んでしまったんだとすれば、死にたくないと思ったのかもしれないが、今回は誰かに望まれて、誰かの為に死んだのだ。
そこには後悔なんて微塵も無いし、そんな感情の覚えは無い。
※それが出てたんですよ。
……急にめっちゃフランクになるな。さっきまでの機械的な返しだったくせに。お前モニターのくせに感情とかあるのか?それとも、その画面の裏に誰か居るのか?
※
絶対、嘘だろ。さっきの返しは絶対後ろに人間入ってる返しだった。後、『感情』無いとか思春期の中学生か?神様ごっこなんて個人で好きにすればいいけど、そう言うのは大人になってから後悔するからやめといたほうがいいぞ。
※大人になれなかった貴方が、大人を語るとは面白いジョークですね。
おいおい、いきなり凄いブラックジョークぶち込まれたぞ。コレで感情無いは無理があるだろ。
後、一応言っておくが、俺の大人の判断基準は「一人で社会で生きていけるかどうか」だから、もう既に推薦で進学が決まり、生活費のためのバイトもこなし、一人で十分生きていた俺は「一人で生きていた」と言え……いや、生き抜けて無いから、この条件だと俺はまだ子供のままではあるのか。
殆ど帰って居ないとはいえ、ある程度の荷物は叔父叔母の家に置いてたし、偶に生活費がキツイ時なんかはバイト先の先輩からご飯を奢ってもらってたし。
※結論が出たようで何よりです。つまり、貴方は未だに子供という事です。
気付かせてくれた事は有難いが、何でお前そんなに上からなんだ。別に俺が「子供」って言う立場だったとしても、お前が偉くなったわけじゃないからな。
※ Q.貴方は私より下ですか?
《YES》 《YES》
選択肢を提示するならせめて選ばせろよ!仮に、お前の方が俺よりあらゆる面で上だとするのなら、もうちょっと大人な対応してみせろ。何で文字だけの存在に「生命としての格」マウント取られなきゃならないんだよ。
※
おい、絶対感情あるだろ。感情がなきゃこんなに他人をイラつかせる文字の使い方なんて出来ねぇって。白状しろ、どうせネットミームにどっぷりハマったとんでも存在とかだろ。ほら、モニターの後ろから煽って来るんじゃなくて面と向かって掛かってこい。
……あっ、俺、今顔無かったんだった。
※グッドジョークです。二ポイント差し上げましょう。百ポイントでモニターのフォントが変わりますので、是非貯めてみてください。
百ポイント貯まる程こんな所に居たら、気が狂うに決まってる。
良いからさっさとここから出してくれ。今、現実の俺がどんな状況かは知らないが、どうせ死んでんだ。天国じゃなくて地獄でも良いからさっさと送ってくれ。この部屋に長く居ると気が狂っちまう。
※貴方が向かう先は天国でも地獄でもありません。
は?じゃあ、一体何処に連れてかれるんだ?
※
黒……随分と簡素な名前だな。もうちょっと捻ったりしろよ。
※
……簡潔に今まででいちばん大きな文字がモニターに映る。どうやら、少し怒らせてしまったらしい。
※話が逸れましたが、私と言う「システム」は聞き届けた願いを叶える義務があります。今回であれば、貴方の『死にたくない』と言う願いです。
じゃあ、何だ?確実に死んでる俺を何らかの方法で生き返らせるとかか?でも、どうせ俺はまた直ぐに死ぬぞ?そんな願い覚えていない程度には俺は自分の命への執着は無いからな。
※生き返って貰うのは事実ですが、貴方を元の世界に戻す事は出来ません。幾ら、「願いを叶える」存在である私でも、世界のルールを破るわけには行きませんから。ですから、貴方には元の世界とは根本から違う別の世界で生き返ってもらいます。
別の世界?
※はい。貴方達と似た環境で生きているにも関わらず、貴方達とは違う発展を遂げた世界です。
俺たちとは違う発展?
※貴方が転生させる世界には、貴方達の世界では不要と切り捨てられた、魔法や特殊能力を持つ人達が大勢います。代わりに科学技術は発展しませんでしたが。
……悪いけど、俺の願いはキャンセルで。
もしも、本当に俺が『死にたくない』なんて願ったんだとしても、一応、俺の死はキチンと理由のある死ではあったんだ。今更、それをやり直そうなんて、無意味なことはしたくない。そりゃあ、何で「死にたくない」なんて思ったのかはちょっと疑問が残るし、モヤモヤもするけども、別に異世界で生き返ったとて、それが分かる訳でもない。
※キャンセルは出来ますが、本当にキャンセルしますか?
あぁ、別にいいよ。
※もしかすると、貴方が「死にたくない」と思った理由が分かるかもしれませんよ?
……何だと?
※私は貴方が『無意味』を嫌うのはよく知っています。だと言うのに、貴方は自分の最後の感情を『無意味』な物へと変えてしまうのですか?このまま生き返れさえすれば、必ず辿り着けるその答えに辿り着こうともせず?
……こいつが一体何なのかは分からないが、こうまで腹が立つ相手は初めてだ。この野郎、俺が最も嫌う事を盾にして、この俺の事を口車に乗せようとしてやがる。
※私は唯のシステムですので、それでも構いません。最終的な判断は本人がすることですから。
ぐっ、ぐぎぎッ……!
※では、もう一度問います。
______ふぅ、落ち着けよ俺。別に俺の最後の感情に意味があろうがなかろうがどうでもいい事じゃないか。それこそ、どうせこのまま死んでしまえば無に帰るのだから、そんな事をいちいち気にする必要も無い。
※これから起こることは全てノンフィクションであり、諸君等の如何なる選択に我々は一切の責任を持たぬ事をここに記す。
一度見た文面がもう一度モニターに流れる。
ほら、よく見てみろ。何かすっごい怪しそうだし、態々こんな問いに答えてやる必要なんて無いはずだ。
ほら、深呼吸だ。スー、ハー______
※以上の事に同意した者にのみ、この先に進む権利がある。
Q.同意しますか?
《YES》 《NO》
_______《YES》で
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