阿波踊りと僕②

僕は至って普通の大学2年生。

同級生の悠星と阿波踊りでの屋台バイトしていると好きな女の子が迷い込んでいた。


「おーい、野田さーん!」


すると彼女はこちらに気づきよってくる。


「ちょっと悠星!なんで呼んだのさ!君明莉さんと面識合ったっけ!?」

「あるよ?」

「あるの!?」


いつも明莉さんの友達に聞いたとかが多かったから面識ないと思っていた。


「悠星君やん!なにしてん?バイト?」

「そうだよ、かき氷屋さん似合ってるかい?」

「インテリヤンキーみたいで似合ってるわー。」

「はは、相変わらず突っ込みが手厳しいね。ところでこんなところで何していたんだい?」

「そそ、友達とはぐれたねん!黒髪に金のメッシュのツーブロックの男の子見てない?」

「見てないなぁ。」

「そっか…隣の子は?知り合い?」


あ、僕のこと覚えてないのか…

そうだよね。たった一回会っただけだし…


「もしかして四月ごろ体調不良で倒れていた子?」

「え…」


覚えててくれたんだ。

こんな僕のことを。


「なんか雰囲気変わったね!すごくかっこいい!」

「あ、ありがとうございます。僕、実は…」


だがそれ以上言葉が出てこなかった。

緊張しているのだろうか。

いや、緊張はしていない。

さっきの明莉さんの言葉、黒髪に金のメッシュのツーブロック。

きっとあの子と来ているのだろう。


「どしたん?実は?」

「いや!なんでもないよ!さっき言ってた男の子は彼氏さん?」

「え!?いや!え!?そんなんとちゃう!はずなんやけど…」


やっぱり、そうなんだ。

ずっと思っていたことが当たってしまった。

明莉さんはあの男の子が好きなんだ。


「好き…なんですね。」

「うん、好き。すごく好きなんよ。」

「素敵です。うまくいくといいですね。」

「うん!ありがとう!じゃあ、うち行くね!」


そういって明莉さんは去っていった。

心の底は悲しいようなすっきりしたような変な気持ちだ。


「よかったのかい?これで。」

「うん、よかったんだよ。きっと。」

「お疲れさまだ。」

「ありがとう、ありがとう。」


そう言ったとたん涙がこぼれてきた。

でも今はバイト中だ。

すぐに涙をぬぐい気持ちを切り替えた。

するとすぐに


「明莉ー?」


一人の男の子が屋台に入ってきた。

そこにはいつものあの男の子が姿が。

あぁ、明莉さんを探しに来たんだな。


「あ、あんた…」


そうだよね。いきなりいたらそういう反応になるよね。


「君は…明莉さんと仲がいい…」

「そうだ!明莉!明莉来なかったか?」

「野田さんならさっきまでここにいたけど君を探すといって飛び出していったよ。」

「さんきゅー!」


そういうと彼もすぐに飛び出そうとする。


「待って!」


そう叫んで呼び止めた。

これだけは確認した。

きっとこれで全部終わるから。


「君は明莉さんの彼氏なの?」

「あ?彼氏?ちげーよ!」


あれ?思った答えと違ったな。

でもすぐに彼は続けて言った。


「でも好きな人だよ!じゃあな!急いでるから!」


そして飛び出ていった。

よかったね、明莉さん。

本当に良かった。


「終わったかい?」

「うん、終わったよ。悠星…」

「どうしたんだい?」

「明日くらい飲みにいかないかい?」

「いいね。行こうか。」


そして心にぽっかり穴が開いたような、でもだからこそすっきりしたような、複雑な心境だ。

今日は本当に暑い日だ。

今日という日を僕は忘れないだろう。

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