阿波踊りと俺②

俺は至って普通の大学2年生。

大学の同級生の明莉と阿波踊りに来ていたところ明莉とはぐれてしまった。


「くそ、人が多くてわかんねぇ…」


とりあえず連絡は入れておこう。

回線がふと入った瞬間に送れるかもしれない。

明莉が行きそうなところを考えてみる。

阿波踊りの踊り子たちが見えるとこ、屋台。

…どちらかといえば屋台かもしれない。

まだ近くにいるはずだ。

そして俺はまた明莉を探し始めた。

たこ焼き、焼きそば、フライドポテト

いろんな屋台の前を通ったが明莉の姿はなかった。


「あと残すはここだけか…」


かき氷、今朝明莉と一緒に食べたのを思い出しながら俺は進んでいった。


「明莉ー?」


明莉の姿は見当たらなかった。

だが、知っている顔があった。


「あ、あんた…」


この子の顔は何度か見たことがある。

明莉のバイト先のラーメン屋、大学内、そしてバイト先。

明莉のことをよく見ていた子だ。


「君は…明莉さんと仲がいい…」

「そうだ!明莉!明莉来なかったか?」

「野田さんならさっきまでここにいたけど君を探すといって飛び出していったよ。」


眼鏡をかけた知らない男の子が出てきてそいういった。


「さんきゅー!」

「待って!」


最初の男の子に呼び止められた。

急いでるんやけどな…


「君は明莉さんの彼氏なの?」

「あ?彼氏?ちげーよ!」


そういうと男の子は少しびっくりしたような顔になった。

でも続けて俺は言った。


「でも好きな人だよ!じゃあな!急いでるから!」


そういって俺は屋台を飛び出た。

明莉を探しまわってどれくらいたっただろうか。

気が付くと俺は駅から少し離れた神社まで来てた。


「はぁはぁ、ほんとどこ行ったんだよ…」

「あれ?こんなとこにおったんや!」


聞いたことのある声、いつも俺の隣で騒ぎ立てている声。

聞き間違えるはずのない、

俺はすぐに振り返った。

そこには明莉の姿があった。


「明莉…ほんまどこいっとたんよ。めっちゃ探したんやで。」

「こっちのセリフよ!はぐれてから屋台めっちゃ回ったんやけん!」

「はぁ、とりあえず疲れた…」

「うちもや…」


そういって俺たちは神社のベンチに座った。


「さっき、屋台で同級生の子に会ってね、君との関係色々聞かれたよ。」

「ほぉ、俺もだ。」


さっきのかき氷の屋台だろう。

いきなりでめっちゃびっくりした。


「で、君はなんて答えたの?」

「ん?そうだなぁ…彼氏じゃないって言ったくらいだよ。」

「なにそれー。…それだけ?」

「まぁ、あと…」

「あと?」

「す…」


バン!!!


好きな人と言おうとした瞬間花火が上がった。

俺たちは打ち上げ音のほうへ振り返った。

バン!バンバン!

次々花火が上がっていく。

俺たちはしばらく上がっている花火に

色とりどりに打上がる花火は本当にきれいだった。


「綺麗やなぁ。」


綺麗だった。

花火より打ち上げ花火を見ている明莉のほうが綺麗だった。


「好きだ。」


ぼそっとつぶやいてしまった。

まぁ、小さい声で言ったから聞こえてないだろう。


「え…、うちのこと好きなん?」


…聞こえてたかぁ。


「なぁ?どうなん?」

「はいはい、好きですよ。今も花火見ながら明莉がきれいとか思ってましたよ。」


チラッ


明莉のほうを見ると明莉は顔を真っ赤にしてこっちを見ていた。

それを見るととたんに熱が出たような暑さが込みあがってきた。

きっと俺も顔が真っ赤になっているのだろう。


「顔赤いで。」

「明莉こそ。」


俺たちは両想いということが分かった。

今日は本当に暑い日だ。

今日という日を俺は忘れないだろう。

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