阿波踊りと僕①

今日は8月13日。

気づけば夏休みも中盤。

暑い日が続くそんな日に僕と悠星は


シャーシャーシャー


「はーい、お待たせー。ありがとうねー!」


屋台の中でかき氷を削っていた。

なぜそんなとこでかき氷を削っているかって?

それはさかのぼること1週間前…


『おーい、そこの帰ろうとしてるお二人さーん。』

『『はい?』』


バイト終わりに突如店長から呼び止められた僕と悠星。


『どうしたんですか?』

『実はな俺の従兄弟が阿波踊りのとき屋台でかき氷を出すんだけどよ、バイトやる子いないかって聞いてきたんだよ。どうだ?2人やってくれないか?な?』


この様子だとやってくれる子が見つからなくて困ってるんだろう。

でもお盆は帰ってくるように言われてるんだけどな…


『頼むよ!誰もいなくてさぁ。』

『僕はパートナーである君がやるなら行くよ。』

『いつからパートナーになったんだよ!店長、すみません、その日は帰ってくるように親から言われてて…』


You got call!!!

You got call!!!


突如僕の電話が鳴った。

オカンからだった。


『もしもし?』

『もしもし?あんた盆帰ってくるんで?帰ってきな言ったけど家誰もおらんでよ。お母ちゃんたちスーパーのガラガラで温泉旅行当たってもうたんよ!お盆中にお父ちゃんと行ってくるけん勝手に盆過ごしなな!ほな!』


ぶちっ!

ツーツーツー


『店長、バイト行けそうです。』


で今に至る。

まだ午後1時なのでお客さんも全然いない。

阿波踊りは夕方からお客さんが増えきてピークは演舞場で踊りが始まる18時くらいからだ。


「まだまだ人来ねぇだろ!かき氷好きなだけ食っていいから今日と明日は頼むぜ!」


店長の従兄弟でこの屋台の主であるはじめさんだ。


「はい!ありがとうございます!」

「いやぁ、助かったぜ。18時になったら俺も連のみんなに呼ばれててさ。」


連、阿波踊りのグループのことだ。

一さんは有名連の大太鼓を担当しているらしい。


「いやいや、僕たちこそバイトに誘っていただきありがとうございます!」

「じゃあ、俺は夕方までこの辺うろちょろしてるからなにか困ったら携帯に電話してくれー。」

「「はい!」」


とてもいい人だ。


「かき氷食べるかい?僕は食べるからもう削ってるけど。」


シャーシャーシャー


悠星は1人自分の分を自動かき氷機にセットして削っていた。


「食べる!夕方から忙しくなりそうだから今のうちだね!」


***


「悠星!この2つブルーハワイ!」

「了解したよ!」


現在時刻18時過ぎ。

阿波踊りの華麗な音色が貼り始めて屋台も列ができ始めていた。


「すごい人混みだね。阿波踊りってこんなにも人が来るんだね。」

「いつもと全然違うよねー。って悠星来たことなかったの!?」

「僕は隣の高知出身だからね。よさこいは何回も見てるけど。」


悠星が高知出身だったなんて、初耳だった。

高知の方弁といえば

〜やき。

とか

〜しちゅーが?

とかだけど大体標準語で喋るから気づかなかった。


「あれ?あそこに見えるのは…」

「どうしたの?」

「あれ、野田さんじゃないかな?」

「え!?どこ!あ、いた!」

「誰か探してるようだけど…呼んでみよう。」

「え、ちょっ、」

「おーい、野田さーん!」


とめようとしたが悠星は声をかけてしまった。

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