梅雨の俺

五月下旬、今年はいつもより少し早い梅雨入りだそうな。

外を見ると雨がザーザー降っていた。

そして今日は花の金曜日。

大学から帰ってきた俺は一人ゲームをする…予定だった。


「うわー!玉こーへん!物欲センサー出とるわー!」


相変わらず明莉にゲーム機を取られてる俺。

そして雨も気にせず一人ゲームをしているのが明莉さん。

さすが明莉さんっす。

こんなに雨が降っててもぶれないっすね。

ちなみにいま彼女がしているゲームはモンスターハント。

モンスターを自分の得意な武器で攻撃し、弱らせ、捕獲するゲームだ。

捕獲成功すると素材が手に入り新しい武器や防具を作ることができる。

年齢制限15歳以上の人気ゲームだ。


「はぁ、一人でハントするのも疲れてきたわ。一緒にハントしに行こうやぁ。」

「構わないけど…今日、花金だよ?友達と飲み会とかなかったの?」

「今日は断ったー。雨で動く気にならへんしー。」


動く気はないのに俺の家には来るんかい。

そしてゲームするんかい。


「ここで飲み会しようよー。ほらお酒隠してるの知ってるんだよー?」

「別に隠してるわけではないけど…まぁ、たまにはいいか。」

「うぇーい。」


俺はキッチンの上の棚においていたお酒を取り出してきた。

ビールに酎ハイ、そしておつまみも。


「かんぱーい!」

「かんぱ。」


軽く缶をぶつけて乾杯をする。

久々に乾杯なんてしたかもしれない。


「あー、うめぇー!…いや、おっさんかって突っ込んでくれよー!」

「いや、明莉がおっさんなの知ってるし。」

「ノリのない男はモテないぜ。」

「べつにモテなくていいよ。」

「え!君はハーレムに興味がないっていうんか!?」

「なぜにハーレムやし。そこは恋愛とちゃうんかい。」


などと冗談を言い合いながらお酒を飲んでいた。

こんな明莉を知っているのは男友達では俺くらいだろう。

明莉のファンが見たらどんな反応するだろうか。

ちょっとだけ気になるな。


「さてと。ハントしにいこうか!」

「おけ、俺は援護のしやすいボウガンで行くよ。」

「うちはいつもこの大きな剣や!」


いつも隣で見てて思ったけどこの子武器チョイスが勇ましいのよね。

性格でてるなぁ。


「よっしゃ、獲物発見!かましたる!」

「はいはーい、冷静に行こうねー。」


モンスターを発見し明莉はすぐにモンスターにとびかかった。

僕は援護する為に後方で銃を撃っては明莉がピンチになるたびに助けるを繰り返した。


「もうハントしていけるんちゃう!?」

「うん、いけるで。」

「よっしゃ!クエストクリア!あとは玉が来るのを期待して…」

「あ、俺、玉来た。」

「…は?うちこんかったねんけど…」

「まぁ、あるあるだよね。」

「うがあぁ!」


明莉はそう叫ぶと俺にとびかかってきた。


「うがあ!羽交い絞めにしたる!」

「待て、ほんまに待って!俺に罪はない!そしてなぜ羽交い絞め!?そんなんどこで学んできたし!?」


二人でお酒を飲みながらワイワイゲームをする。

こんな日もたまにはいいかもしれない。

この後明莉に玉が出るまで俺はずっと突き合わされ雨の降る花の金曜日は幕を閉じた。

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