第15話 となり
早朝、目が覚めて約束の時間前に家を出る。
少し肌寒い風の中、マフラーを鼻まで上げて歩き出すと目的地へ向かった。
葉月と会って何を話すんだろう?
これからも友達でいよう、そう言うべきなんだろうけど。
冷えた手をポケットに突っ込んで視線を上げる。
少し離れた場所に見慣れた姿が見えた。
葉月は相変わらず素敵でぼんやりと空を眺めている。
かじかがゆっくり近づくとそれに気付いてホッとしたように微笑んだ。
『良かった。来てくれて。』
少し低い声で優しく響く。葉月は眉を下げるとかじかを見た。
『寒いけどさ・・・散歩しながら話しよ。』
『うん。』
二人並んでゆっくりと歩き出す。
隣を歩く葉月は久しぶりでドキドキした。
『あいつにさ・・・告白されたんだ。』
『え?ああ・・・そうなんだ。』
ズキっと痛む心臓にドキドキがプラスする。
『でも断った。好きな奴いるって。』
『そう・・・なんだ。』
歩いているだけで精一杯で自分が答えている言葉がよくわかってなかった。
かじかは足を止めた葉月に気付いて振り返る。
『わかってる?俺が言ってること。』
『え?あ、ごめん。なに?』
葉月の目を見て、かじかの顔が熱くなる。
一気に心臓の音が大きくなった。耳にまで響いてくる。
『・・・。』
何か言いかけて葉月が口を閉ざす。
ゆっくりとかじかの傍に立つと頬に触れた。
大きな手が優しく動く。熱いのは頬?それとも手?
『・・・かじか。』
かじかが顔を上げると葉月の顔が近づいて額が触れた。
『・・・傍にいてよ。俺の。』
するっと葉月の両手がかじかを抱き寄せる。
葉月の胸に抱き寄せられて甘い香りがした。
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