第14話 懇願

真夜中、携帯電話にメッセージ。


葉月からだ。


『ごめん。』から始まった言葉は、かじかと彼女のやり取りを全て知っているようだった。


『あいつから全部聞いた。ごめんな・・・俺、何も知らなくて。』


かじかはそっとメッセージを打つ。指先が震えていた。


『大丈夫、ごめんね。彼女がいたのに邪魔してたのは私だった。』


『違うよ。彼女じゃない・・・あいつ何言ったのか知らないけど、まじで付き合ってないから。』


『うん、でも友達なら邪魔できないよ。』


『邪魔って?』


『あの子、君のこと好きだって。だから友達としては応援しなくちゃ。』


メッセージを打ち終えて数分、パタリと反応が来なくなった。


かじかが携帯電話を置くと呼び出し音が鳴り響いた。

おそるおそる出ると葉月の不機嫌そうな声が聞こえた。


『友達?』

『・・・うん。』


『なあ、まじで言ってる?俺、そんな風に思われてた?』

『え?』


『こんなこと電話で言うことじゃない。でもメッセよりちゃんと言わなくちゃいけない。なあ、かじか・・・俺のこと嫌いか?』


葉月の声が少し震えている。


『き、嫌いじゃない・・・。』

『なら・・・さ、明日、朝ちゃんと会おう。ちゃんと話そう。』


どこか泣き出しそうな声にかじかの心臓がぎゅっと潰された。


『わ、わかった。ねえ・・・。』

『何?』


『ご、ごめんね?』

『・・・うん、いい。大丈夫・・・でもさ、本当に。』


『うん?』


『頼むから・・・避けないで。』


電話が切れて光の消えたそれをぎゅっと胸に抱きしめた。

今更こんな風に思い知るなんて・・・。


私、葉月が好きだ。


それでも、あの日見た彼女の揺れる瞳が忘れられなくてただ目を閉じた。

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