第13話 大きな手


それから二ヶ月ほど、かじかは葉月を避けていた。

その間も携帯電話にはメッセージが届いている。


返事はしているものの、なにかと理由をつけて会うことだけは避けていた。


学校でもなんとか顔を合わさないようにしていたものの、とうとう捕まってしまった。


『かじか!』


呼び止められて手を捕まれる。

久しぶりの葉月は少し疲れているのか顔が青かった。


『ごめん・・・。』


振りほどこうと手を動かしたが葉月がぐっと握り締める。


『ちゃんと話しよう。喧嘩してるわけじゃないんだからさ。』

『・・・そう、だけど・・・。』


ぐっと振りほどこうとした手を上げると葉月は首を横に振る。


『かじか・・・頼むから。』


『・・・わ、わかった。』

そう言い終える前に葉月の後ろからあの子がやってくる。


綺麗でまぶしい女の子。

彼女はかじかを捉えると目を吊り上げてやってきた。


『優雨!!今日一緒にカフェ行こうよ。』


葉月の視界に入ると彼女の顔が柔らかく優しく微笑む。

それを見て葉月が眉をひそめた。


『悪いけど、俺、今かじかと話してる。』

『うん、じゃあ終わるまで待ってる。いいでしょ?』


『・・・よくねえよ。まじでさ・・・。』


葉月の声が少し強くなったので、かじかは掴まれたままの葉月の手を動かした。


『行っておいでよ。また後で電話して。話ならそれでもできるよ。』

『な、かじか!』


かじかは彼女の顔を見て頭を下げると葉月の手を優しく外した。


『ごめん。本当に・・・邪魔しないから。ごめんね。』


葉月の顔すら見れずに踵を返す。

情けなくて泣き出しそうなのをぐっと堪えて足早に逃げ出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る