第10話 好きな色

最近の自分は変だと思いつつ課題を作るためにラップトップとにらみ合っている。


かじかは頬杖を付くと机の上にある携帯電話を見た。


何かメッセージが来ているらしく点滅している。

気が散るといけないから手には取ってはいないが、さっきから数分置きくらいに届いている。


迷惑メールの類だろうか?


またピコンっと音がして、かじかは仕方なく携帯電話に手を伸ばした。


『うん?』


メッセージは葉月だ。

開くと今丁度送ってきたらしい、迷惑メールにまぎれている。


『何してる?』


葉月らしいメッセージに噴出すとかじかは指先で文字を打つ。


『課題やってる。』

『課題?進んでる?』


『進まない。ウサギにしようかネコにしようか悩んでる。』

『うーん、じゃあネコにしたら?』


『ネコか、そうしようかな。』

『出来たら見せて。俺まだ、かじかの作品みたことないし。』


『まじで?』


『うん、誰かに見せるために作るほうがモチベ上がるよ?』

『そっか・・・そうやって作ってるの?』


『うん、俺は被写体がいるし・・・良い物作って見せたいって思うから。』

『わかった。頑張ってみる。』


『うん、頑張れ。』


やり取りが終わり、電話の向こう側で葉月が笑っているような気がして、かじかは微笑む。


最近本当にこういう感じになることが多い。

なんだかんだ一緒にいて、いろんな話をしている。


それでも時々ドキっとすることが多くなって、どこか居心地が悪い気もしている。


かじかはラップトップに向かうとネコを描く。

デザインは、モチーフは、考えることは山積みだが、葉月が頑張れと言ってくれたのだから頑張れそうだ。


以前作った画像のファイルを呼び出すと一つ一つ確認を始めた。

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