第8話 足りない自覚
かじかが葉月と出会って一年が経つ。
丁度出会った頃と同じように飲み会があるらしく、メイから間に合わせの連絡があったが傍にいた葉月が大きく息を吐いた。
『あー、行かなくていいよ。』
『そう?新歓も兼ねてるって聞いたけど。』
『そうだけど、メイちゃんは彼氏いるんだろ?だったら大丈夫だけどさ。』
『うん?』
葉月はかじかに眉をひそめる。
『もう、わかってないな。かじかは二回目だけど結構気にされてるわけだ。わかる?彼氏いないってわかってる連中は、何がなんでも接点持ちたくなるだろ。』
『そういうもん?』
『そう。』
『ふうん・・・でもさ、巷では私たち付き合ってるって聞いたけど・・・そういうことなら気にすることないんじゃ?』
かじかがサラっと言うと葉月はムッとした。
『違うじゃん。まあ・・・そりゃあそうだとしても、かじかが望めばそうもなるし。』
『どういう意味?』
『あー、もう。いいから・・・とにかく行かなくていい。わかった?』
葉月の困り顔にかじかは笑いが止められず歯を見せた。
『アハハ、行っちゃおっかな。』
『だから!もう・・・お前わざと言ってるだろ。』
少し怒気を孕んだ声にかじかは苦笑する。
『ごめん・・・。』
『・・・いいよ、もう。でも本当にさ、自分を大切にしなくちゃ駄目だよ。』
『え?』
葉月は両手をポケットに突っ込むとかじかを見下ろした。
『かじかはどっか・・・背が高いとか色々気にしてるっぽいけどさ。そんなの男から見りゃあマイナスにはならないよ。女の子は皆、少しずつ素敵に変わっていくもんだし・・・前と比べたらお前は可愛くなった。』
真面目な顔をして言う葉月にかじかの頬が熱くなる。
『フフ、そういう照れるとこも・・・可愛い。そういうの意識してなかったんだろ?』
『・・・うん。』
『なら、これからは意識して・・・自分が魅力的だってこと覚えておくべき。かじかなら簡単に男落とせちゃうんだぜ?』
『そんなの・・・嘘だよ。』
かじかが顔を上げると葉月は困った顔をして微笑んだ。
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