第7話 カメラ
『聞いてる?』
上の空だったのか目の前に覗き込んでいた葉月の顔に一瞬驚いた。
今日は海の撮影。
暖かい砂浜に座り込んでいたせいで、気持ちよくなっていたようだ。
『ごめん・・・何?』
葉月は隣に腰かけると小さく溜息を付く。
『・・・もういい。で、何か悩み事でもあんの?』
『うん?そんなことはないけど。』
『・・・お前、顔に出やすいからさ。俺でよければ聞くよ?』
『顔に出てた?』
かじかが片手で頬に触れると葉月はハハと笑う。
『うん。ま、言いたくないならいいけどさ。』
『ごめん。あ、で、どんなの撮れたの?』
視線を葉月の手元に移す。
『ああ、見る?かなり綺麗なの撮れた。』
葉月はカメラを操作して撮ったものを見せてくれる。
美しい色合いが小さな画面に納まっている。
『うわあ、凄い綺麗。才能あるなあ・・・。』
『まあね。賞も取れちゃうほどだから。』
『自分で言う?・・・でも凄いな・・・かっこいい。』
素直に出た言葉だったけど、一瞬葉月が止まった気がして顔を上げた。
視線が合うと彼の顔が赤くなった。
『うん?』
『あ・・・いや。なんか・・・珍しく照れた。』
『言われ慣れてるでしょ?』
『慣れてるけど・・・なんかね。』
『そっか。』
目の前のいつも自信満々な葉月が照れてはにかんでいる。
それが面白くてつい声に出して笑ってしまった。
『可愛いとこあんだね?』
かじかの言葉に葉月の顔がもっと赤くなる。
『どうしたの?』
葉月は視線を逸らすと眉をひそめて片手で額を押さえた。
『まじかよ・・・。』
『うん?』
『なんでもない。もう少し撮ってくる。』
カメラを抱えて海のほうへ歩いていく葉月。
なんだか悪いことを言った気になったけど、彼の赤い顔を見れたのでいいかと、かじかはほくそ笑んだ。
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