第6話 メイ
『ねえ、かじかは葉月君とよく一緒にいるけど彼氏なの?』
帰り道のカフェでお茶をしていたメイがカップを持ってかじかを覗き込む。
その目は興味津々とある。
『友達だよ。仲の良い男の子の。』
『ふうん。』
嘘は言ってない。
実際仲が良いし、恋人みたいな距離になったことなんてない。
『好きなの?』
唐突なメイの質問にかじかは噴出すと咳き込んだ。
『何でそんな慌てるのよ。』
『ゴホッ、違う。ゴホッ・・・メイが変なこと聞くから。』
『変?でも学校だと皆、葉月君とかじかは恋人だって思ってるみたいだよ。』
そう言われてますます咳き込むとメイが水の入ったグラスを差し出した。
『ほら、落ち着いて。まあ、そんなに困っちゃうならそうじゃないんだろうね。かじか・・・元彼のこと、引きずってんの?』
グラスの水を一口飲んでかじかは顔を上げた。
『元彼?全然。』
そういえば言われるまで思い出すこともなかった。送り狼君。
『フフ、そっか。ねえ、かじか。』
『うん?』
『葉月君、優しい?』
メイはふわっと微笑んで見せる。
『・・・そうだね、優しいかな。』
『じゃあ、大事にすべきだよ。・・・友達でもね。』
『・・・そう、だね。』
軽快な着信音がメイの鞄の中で鳴り、彼女の綺麗な指先が携帯電話を取り上げた。
『あ、彼氏だ。なんかお休みになったみたい。』
メイの顔が少し嬉しそうに微笑んだのでかじかは頷いた。
『行っておいで。せっかく連絡してくれたんでしょ?』
『うん。行ってくる。かじかも頑張ってね。』
メイは鞄を持つと足早にカフェを出て行った。
今流行の可愛らしいスカートの裾がふわふわ揺れている。
少し進んだところで振り返り大きく手を振るメイ。
かじかが女でもメイは可愛い。
かじかは頬杖を付くと残りのお茶を飲み干した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます