第2話 かじか
グラスは空になったものの、くだをまいた連中のせいで帰るチャンスを逃してしまい、やっとのことで会計が済むとフラフラした連中をタクシーに乗せて腕時計を見る。
終電には間に合いそうだけど微妙だ。
仕方なしに財布と相談してタクシーに乗ることに決めると隣に誰かが立った。
『睦原さんもタクシー?』
葉月はかじかの顔を覗きこむ。
『あ、うん。終電は難しそうだし・・・。』
『ああ・・・確かに。良かったら送ろうか?』
『え?』
『確か家って・・・。』
葉月はかじかの住所を知っていたらしく口にした。
『え?何で?』
かじかが戸惑って一歩後ずさりすると葉月は両手を前で振った。
『あ。ごめん。引くよな・・・俺、配送のバイト少ししてて、睦原さんのとこに一度届けたことがあって。だから変な意味じゃないよ?』
『そうなんだ。ごめん・・・知らないのに引いちゃって。』
『アハハ。俺、飲んでないからさ。車だから送るよ。』
『いいのかな?』
『いいよ。』
葉月の厚意に甘えて彼の車に乗り込むと家まで送ってもらうことにした。
『それにしても・・・結構気を使ってなかった?』
『うん?』
『ほら、帰るタイミング探してそうだったから。』
『ああ・・・そうなんだけど、だめだった。殆どの人が初対面で何話していいかわかんないし・・・メイは即効で酔っちゃって楽しそうに彼氏とイチャイチャしてて。』
『まあ仕方ない。うちのグループあんな感じだから。次誘われても断っていいから。』
『うん・・・考えとく。無下にもしたくないんだ、せっかくの縁だし。』
『へえ、古風な感じか。あ、そろそろ着く。』
車がゆっくりと止まり、かじかは鞄を持つとドアを開いた。
『送ってもらってありがとう。初対面なのに・・・ごめんね。』
『うん、別に。じゃあこれで。』
葉月は車に乗り込むとすぐに行ってしまった。
かじかは車を見送りながら玄関の鍵を開けると小さく息を吐く。
送り狼にならない人・・・初めてだ。
前の彼氏は毎回家に入りたがって、それが原因で喧嘩して別れた。
まあ、でもあのルックスなら女には困ってないんだろうし。
かじかはベットに突っ伏すとそのまま寝てしまった。
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