#003.致死量の自由 その3

 「ま、待って!いま僕はあの鳥を拾いに行こうとしたんだ!キミのために!ホラ、あそこ!がれきの下にいるでしょ?」猫は必死に顔を崩れた壁に向け、目線を促す。

「フン...次はないからな」

「もちろん!!へへっ、この恩は忘れないよ...それで、コレ、取ってくれない?」

「コレ?...何のことだ」

「またまたぁ、もう逃げないから、ね、取ってよ~~」

「何のことだと言っている」

「...え?ほんとにわかんないの?キミの幻影フィルムじゃないの?」

「ふぃるむ?オレの狩猟技術のことか?」


(コイツ、まさか何も知らずに使っていた?いや...狩猟技術と言った。きっとコイツの本能が無意識のうちに使い方を学んでいたんだ..小さい子供が走るみたいに...でも、今ならコイツの能力の秘密を聞き出せるかも。カラクリさえ分かれば、今のボクだって...うん、体力も少しは回復してる。傷はまだ痛むけどきっと勝てる...)


「うん、その技術のこと。キミのその技術、どんなことができるの?今、ボクの身体に何が起こってるの?教えてよ、まだ陽が沈むまで三十分はあるし」

「別に教えてやってもいいが...条件がある」

(しめたッ!やはりコイツ、フィルムのこと何も知らないマヌケだぁ!)

「条件?」

「オレを『場所』へ案内しろ」

「...へ?」猫は自由になった足を確かめながら、気もそぞろで返事をした。

「だから『場所』だよ、あるだろ?お前ら野良の猫が集まって飯食べたり交尾したりする『場所』だ。ここらの近くでもいくつかある。どこだ?それを教えることが条件だ」


(おいぃ...マジかよ..猫ですらボクみたいな若造には教えてくれない『場所』を教えろって...それにまず知らないし...よし、カマかけてみるか)


「あーー、『場所』ね?あるある、ここら辺にいっぱいあるね。でも多すぎてどこだったかチョット思い出せないなぁ...ホラ、ボクたちってよく移動するからね。だからもしキミが知ってる所だけでも教えてくれないかな~~、なんて」

「ああ、いいぞ」


(よしッ釣れた!!そこへ行きさえすれば紛れられるかも...)


「あそこだ」

天蓼は水路の対岸のゴミ捨て場を指差した。


(な、なにィィーッ!?めっちゃ近えぇ...しかもめっちゃ聞かれてたっぽい...あぁ...睨まれてる...威嚇されてる...終わった...もういっそ戦うしかないか..疲れちゃうよね...やだなあ...でもちょっとは回復したからなぁ...腹くくろ)


「おい、どうした?あそこじゃないのか?」

猫はキッ、と天蓼を睨みつけた。

「おい、お前。回りくどいのはもうヤメだ、能力の秘密は無理やり聞き出してやる」

「『主』は来ないのか...?せっかく良い餌が見つかったんだがな...まあいい、来い。」天蓼が戦闘姿勢を取った。



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