第23話 真夜中の攻防②
「———数が多いな……」
戦闘から2分。
俺は無限に湧いてくる様々なモンスターの骨のアンデッドに辟易しながら零した。
ただ、神埼のお陰で俺が全ソースを目の前に集中出来ているため、何とかまだ建物に被害は出ていない。
いやぁ……あの時神埼の提案を断らなくて良かったぁ〜〜。
断ってたらクソほど面倒なことになってたぜ。
流石俺、判断力まで天才かよ。
俺は自画自賛して何とか気分を上げながら、スキル———【聖霊剣】によって具現化した聖なる魔力で出来た剣を振るう。
———ヒュッーーーーズドォオオオオオオオ!!
生み出されるは極光の斬撃。
斬撃は闇を斬り裂いて飛翔。
出てきたモノは勿論、時空の歪みから出ようとするアンデッド達をも触れた瞬間に消滅させた。
だが俺は、すかさず追撃を開始。
「スキル———【
聖霊剣を持つ手とは逆の、光る左手を前方に翳す。
———キィィィィィィィィ!!
溢れる極光と音の衝撃波。
悲しい音を奏でる衝撃波は広範囲に渡り、アンデッドを灰に変える。
しかし、一瞬空いた空間に、再び何事もなかったかのように新たなアンデッドが大量に湧いてきた。
そんな光景に、思わず俺は舌打ちをし、次なる一手を打つ。
「チッ……それならならこれはどうだ、骸骨野郎? スキル———【
呼ぶは、
この世の理を外れし者に、聖なる天罰を与えんとする執行者たる天使達が、闇夜に現世へ顕現した。
「———行け」
号令と同時。
数十もの光り輝く天使が、翼をはためかせて空高く飛翔。
そして———。
「「「「———【
天より、アンデッドを滅ぼす極光の雨が降り注ぐ。
雑魚は触れるだけで消滅。
雑魚でなくても数度当たれば跡形もなく消えた。
しかし———数は減らない。
その様子を眺め……遂にイライラが爆発。
俺は聖霊剣をぶん投げ、頭をかきむしって叫んだ。
「だぁああああああ何だよこのクソダルい作業はッッ!! 終わりが見えなさ過ぎて気が狂うわ!」
消しても消しても消しても消しても消しても無下に湧きやがって!
『え、何かしました?』的な澄ました表情で来んなよボケが!
お前らはゴキブリか何かなのか!?
デカくて強い分、ゴキブリよりタチ悪いなクソッタレがッ!
「「「「「ァァァァァ……」」」」」
「『ァァァァ……』じゃねぇよクソが! おい、能力隊は仕事しろよ! 金もらってんだろうが!」
そもそもの俺の目的は、国家能力隊がこの場に到着するまで持ち堪えることにある。
その目的の遂行のため、魔力を外部に漏れないようにしていたレッサーリッチは俺が消滅させた。
今頃大量の魔力が放出され、流石の能力隊も時空の歪み発生に気付いているはずだ。
だからこそ、俺が能力隊にブチギレているわけだが。
俺は再度スキル———【鎮魂歌】を両手で発動。
先程より遥かに威力、範囲共に強化された死者を鎮める聖なる音が響く。
その衝撃波が溢れんばかりのアンデッドの身を灰燼に帰した。
———が、である。
「いやぁぁああああああああもうアンデッド退治はいやぁあぁあぁあぁあぁ!!」
俺は、『ハロー! 何かしました??』と語り掛けてくるかの如く現れるアンデッドを前に大粒の涙を流して吠えた。
いやホントにいつ能力隊来るの!?
このままだと俺のメンタル崩壊不可避なんだけど!?
この先長い俺の人生が台無しになったらどうしてくれんだよ!
何て、内心
「ん、その姿だと、キモい」
「いやぁあぁあぁあぁあぁ……あ……いつからここにいたのか聞いてもいい?」
「ん、ずっと」
「穴があったら入りたい……っ!」
いつの間にか隣にいた神崎に俺の泣いている姿を見られたことに、俺は羞恥で顔を真っ赤にする。
だが考えてみれば腑に落ちた。
確かに、さっきから相手にするアンデッドが少ないことに違和感を覚えていたのだ。
その理由は神崎の召喚したモンスターだったわけか。
俺が羞恥を誤魔化すように思考を巡らせていると……神崎が口を開いた。
「仮面越しだから、声しか聞こえないけど」
「それならおまっ、俺の声がキモいって言ったのかよ!?」
「ん。ずっとそう言ってる」
「カハッ———ッッ!!」
俺はあまりに痛烈な一撃に、思わず胸を押さえてよろめく。
若干視界が霞んでいるのはもしや俺の脳に酸素が行き渡って———!?
「……神崎、感じたか?」
「……ん。これは、強い」
突如全身を襲った粟立つ感覚に、俺は神崎とのじゃれ合いをやめて【聖霊剣】の切先を時空の歪みに向ける。
神崎も周りにインビジブルモンキーを数体召喚して銃を構えた。
その時———。
「———ォォォォォォ……」
腹の底に重く響くような重低音が耳朶に触れ、全神経が気を付けろと警鐘を鳴らした。
「いやぁ……ミスったミスった。ウザ過ぎて倒し過ぎたわ」
「ん、予知には?」
「居たよ。後方腕組みして強者感出してた奴がな。十中八九ソイツだろうな」
アンデッドの出現が止む。
時空の歪みが外部からの力で広がり、アンデッド達が歪みを見て動きを止める。
そして———一体の杖を持ったボロボロの黒装束姿のアンデッドが現れる。
「強大なアンデッドを確認。攻撃開始」
新たなアンデッドを認識した天使達が一気に下降する。
そして手に次々と光の剣を生み出し、振り下ろした。
———ガキィィィィィィィンッッ!!
しかし、奴は魔法によって現れた半透明の障壁で全て防ぐ。
それどころか。
「———【滅びよ】」
俺達にも分かる言葉で魔法を発動。
それと同時。
奴の杖より怪しげな黒い光が放たれた。
「っ、スキル———【無効化結界】」
俺は嫌な予感がして咄嗟にスキルを発動。
半透明の結界が、俺と神崎を包む。
この判断は、英断だった。
結界のない天使達は、断末魔すら上げることを許されずその身を滅ぼされる。
「おいおい……あれでもA級中位くらいの力があるんだけどな……」
「ん。間違いなく、S級」
天使の消滅に顔を引き攣らせる俺に、神崎が普段と変わらぬ表情で告げる。
いや何でそんなに冷静なん?
S級なんて滅多にお目にかかれないが?
あ、そう言えばお前は毎日S級モンスターが2体もそばに居たな。
「はぁ……ほんと、最近はなんでこうも面倒な相手に出くわすのかね」
勿論倒すのは倒すのだが……このあまりの不運さには、大きなため息を吐かずにはいられなかった。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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