第21話 新たな共犯者

「———ん、私も手伝う」

「…………はい??」


 スキルを使って神埼を助けた次の週の始め。

 何故か2人で昼飯を食おうと誘われたので、空き教室で昼飯を食っていたのだが……神埼が突然食べる手を止めて言ってきた。


「ごめん、何を手伝うの?」

「人助け。2人の方が、効率いい」

「うーん……」


 結構なド正論に俺は反論出来ずに呻くことしか出来なかった。

 そんな俺に追い打ちを掛けるように神埼が顔を近付けて言う。


「時空の歪みは、私は強い。時空の歪みでモンスターをげっとすれば、その内無敵。他でも、私がモンスターで、避難を促す」

「むむむ……確かに……」


 普段俺は時空の歪みから現れるモンスターに関しては、人の居ない所まで移動してから戦闘を行うので……時間が結構掛かる。

 しかし神埼が先にモンスターで住民達に危機感を煽って避難してくれれば、かなりやりやすくなるのは間違いない。


「でもお前学校は? それに十傑ならやらないといけないことだってあるだろ?」


 俺はそれが嫌で十傑に戦いを挑んだりしないんだからな。

 神埼は十傑でも下位に位置するとはいえ、普通にS級モンスターが2体いるし時空の歪み系の依頼なら結構来るはず。


「ん、大丈夫。十傑は他の生徒の3分の1の出席でいい」

「なにそれズルい。俺も十傑なりたくなってきた」

「でも、依頼は断れない」

「ならやっぱり遠慮しとこうかな」


 俺は神埼の言葉を聞いて、そっと押しかけていたスマホの十傑10席への序列戦申し込み画面を閉じる。

 そしてスマホをポケットに仕舞い、誤魔化すように口を開いた。

 

「……まぁ神埼も普通に強いしいいか。もしもの時は俺が何とかすればいいし」

「ん、よろしく」

「あぁ、よろしく。それと……めっちゃ顔近い」

「ん、ごめん」


 こうして……神埼に押し切られる形で俺に仲間兼共犯者が出来た。


 










 怜太に神埼という共犯者が出来た頃。

 政府によって第15地区(東京)建てられた過去にあった東京ドーム5個分にも相当する巨大な訓練施設兼居住地———国家精鋭部隊【草薙】専用アジト。

 そのアジト内の副隊長室にて、1人の女性———朝比奈麗華が少し苛立たし気に小さくため息を吐いた。


「はぁ……」


(折角神埼さんの連絡で彼を超小型ドローンで追跡してたのに……どうして良いところであんな結界が張られるのよ……! それにそれ以来神埼さんから手伝うのはやめるって連絡がくるし……本当に何があったのよ……!!)


「およ? れいれいがため息なんて珍しー。どしたん? 話訊くよ?」


 そう言うのは、副隊長室のソファーで意味もなくぐでぇぇーっと自室のように寛いでいる金髪バッチリメイクのギャル。

 彼女の名前は、星羅亜衣奈せいらあいな

 亜衣奈の担当は、その見た目に似合わない魔導具職人である。


 そう———怜太の『黒天使』と『白悪魔』を作った張本人だ。


 怜太の指摘通り、亜衣奈は厨二病である。

 しかしそれは口調や仕草には出ず、全部武器の見た目とネーミングに集中している。


「いえ……何でも……いやそうね。亜衣奈、貴女黒と白の2丁の銃を1人のために作ったことあるかしら?」

「銃? ———もちっ! もちだよれいれい! あれはあたしの力作だかんね! 覚えてないわけないっしょ!」

 

(やっぱりあの子の銃は亜衣奈の作品だったのね……通りで強力なわけだわ)


 麗華は亜衣奈の腕を誰よりも認めている。

 彼女の剣も防具も全て亜衣奈の作ったもので、何年も愛用しているほどに。


「でもそれがどうしたん?」

「いえ……その銃を渡したのは———佐々木怜太って男の子?」

「おーせいかーい! およ、れいれいも怜太くん知ってるん?」

 

 亜衣奈は意外そうに……しかし何処か面白そうに、何かを思案する、顎に手を添えた麗華を見つめる。


(あのれいれいが男に興味を持つなんてねー。遂にれいれいに春が来た?)


 亜衣奈から見て、麗華は男性に極端に興味がない。

 その証拠に、麗華が男性と会話しているのなんて仕事以外では見たことがなかった。

 そんな彼女が、年下とはいえ男性に興味を持っている。

 亜衣奈はうずうずを止めることが出来ず……ニヤニヤと揶揄う気満々ですと言わんばかりの笑みを浮かべて麗華に近付く。


「むふふー……もしかして気になってる? 好きピ? 好きピなんだろー?」

「ち、違うわよ。ただ……少し気になることがあっただけよ」


 この程度の拒絶で諦める亜衣奈ではなかった。


「ふーーん? どんな? どんなところが気になったの!? あたし的に怜太くんは普通にイケメンだし、面白いし強いし……何よりあの真希ちゃんの従弟だから超超優良物件だと思うよー?」

「だからそういうことじゃ……はぁ、もう良いわ」


(こうなった時の亜衣奈は手の付けようがないのよね……)


 麗華は亜衣奈を止めることを諦め、1人で盛り上がっている彼女に問い掛けた。


「貴女から見て、佐々木君はどうなのかしら? ———?」

「玲太くん?? おーん……会ったのなんて2年くらい前だしなぁー……あ、でも———」


 亜衣奈は何かを思い出したかのような表情をしたのち、麗華自身知らずの内に椅子から立ち上がって此方の話に集中している彼女を見てニンマリしながら言った。




「———ねー。あたし、これでも人を見る目はあるんだけど、あの時はちょっとショックだったっけ? その分、悔しくってガチで作ろうって思ったんだけどねー!」




 その言葉に、麗華は心の中で呟いた。



(……本当に何者なの———佐々木怜太……)



 そんな彼女の机の上には———怜太と真希、そして怜太の両親と1つの事件記録の書かれた書類が置いてあった。


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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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