第20話 え、暗くない?

「———おい、それは犯罪組織に捕まったらの話だろう」

「えぇぇ……でも政府だって見つかり次第囲って強制的に働かせるじゃん……」

「誰でも怜太みたいに強くないんだ。政府の保護がないと生きられない者が殆どだからな。ちゃんと休みは用意されてるし給料だって月数百万は堅い。これ全部……学校で習ったはずだが??」

「ひゅー、ひゅー」


 真希ちゃんに小突かれ、更には『お前授業真面目に聞いてないだろう?』とカマかけられ、俺は瞬時に余計なことを言うと墓穴を掘ることになると察知してスッと目を逸らす。

 勿論ちゃんと口笛のおまけ付き。


「はぁ……これで成績が悪くないのは謎だな……」

「俺、何かとハイスペックなんで。ハイスペックなんで!」

「悠真の下位互換が騒いでいるな」

「あぁ!? 言った! 俺に1番言ってはならないことを言った!! 例え姉さんだろうと許さないからな!?」

「そうか、好きにしろ」


 ……ノリ悪いなぁ。

 ただ、どうやら俺の認識はちょっと違ってたみたい。

 ただ、厳重に管理されて強制的に働かされるのは本当。

 未来視系の異能力者は外に出られず……極力人と関わるのも禁じられている。

 なるべくその情報が拡散しないようにするためだ。


 皆んな大変そうだな……何て、背もたれに背を預けて他人事の様に俺が考えていると、神埼がふと此方を見て首を傾げた。


「……何で、せんぱいは普通に生きてる?」

「言ったろ? 俺のはスキル。ライセンスに俺のスキルは表示されない。だから俺は未来視系異能者ではないの」

「性能的には政府が1番欲しがるだろうがな」

「?? せんぱいの予知は、他と違うの?」


 まぁそうなるわな。

 俺は頭の上に疑問符を幾つも浮かべる神埼を見て頻りに頷く。

 

「俺のは、9割以上がモンスター絡みで死人が出る事件とか大規模災害だな。いい予知なんて存在しません。死ぬほど使えんゴミ能力だよ」

「なんで?」


 神埼は俺のゴミ能力の部分に反応したのだろう。

 そりゃあ当事者じゃなければ物凄く有能な予知に思えるかもしれんからな。


 そんなまだ予知を分かっていない神埼に……少し怒った様子で顔を怖くする真希ちゃんが語った。


「神埼、2度とその質問はするな」

「……なんで」

「はぁ……いいか? 怜太の予知は睡眠時に発動する。その対象の出来事を一人称視点、又は三人称視点で鮮明に見せられるんだ。つまり———悲惨な現場を鮮明に見せられる。怜太自体はあくまで見ているだけだから、指1つだって動かせない。頭の良い神埼なら分かるだろう?」

「……ん、私が、悪かった」


 何となく俺の予知の弊害を理解したらしい神埼が、少ししょんぼりとした様子で頭を下げて謝ってきた。

 俺はまさか謝られるとは思わず少し焦りながらブンブン手を振る。


「いやそんな謝ること無いって! こらっ、姉さんが怒るからだぞ!」

「……だがな」

「その気持ちは嬉しいけど……姉さんは俺が予知を見た日のことを知ってる。でも神埼は知らないんだからしょうがないだろ?」

「……そうだな。すまない神埼、少し感情的になりすぎた」

「……ん、私が悪かった。別に謝らなくていい」


 暗い、重い。

 俺的にはもっと明るい感じで言おうと思ったんだけど……仕方ない。

 ここでムードメーカーたる俺がこの鬱屈した空気を払ってやろう!!


 俺は机を見つめてだんまりする真希ちゃんと、もう中身のないコップを触る神埼に向かって、椅子から立ち上がり、なるべく明るい口調で告げた。




「———はい、これで俺のスキルの話は終わりっ! よし、今日は『神埼救えたねバンザイ会』として寿司食いに行こう! 勿論姉さんの奢りで!! ほらほら、早くしないと置いてっちゃうぞっ☆」




 俺がそう言って玄関に向かう途中でチラッと2人を見ると……。


「……ははっ、はぁ……仕方ないな。神埼、アイツは置いてくと言ったら置いてく男だ。置いていかれる前に行こう」

「……ん」


 2人は俺を穴が開くくらい見つめていたが、お互いに見つめ合い……ふっと笑みを浮かべて立ち上がった。

 俺はそんな2人から視線を切って靴を履こうと……ん?


 俺……何かちょっぴりディスられてなかった?

 いや……まさか、そんなことないよな……うん、ないない……。


 これ以上は考えないようにして、俺は靴を履いた。


 因みに、人の金で食う回らないお寿司屋さんは……顔面が砕けそうになるほど美味かった。


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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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