第14話 この街で起きていること

「———と言うことで、無事、護衛の依頼を受けれるようになった」

「ん。護られることになった」

「まぁ必要なのかは知らんけどな」

「迂闊に、街中でモンスターは出せない」

「確かに。なら必要だわ。お前身体能力は雑魚中の雑魚だもんな」

「……ぐぬぬ」


 次の日の昼休憩。

 俺は改めて悠真と恋花に、護衛対象である神埼を紹介していた。

 恋花は一昨日のことを知らないので、普段通りのほんわかな笑みを浮かべる。


「久し振り、琴音ちゃんっ!」

「ん、久し振り。恋花先輩」


 どうやら同じ十傑同士、話したことがあるらしい。

 そもそも恋花は悠真をも凌ぐコミュ強なので、2人の仲は気にしなくても良さそうだ。


「ところで……お前はどうした?」


 俺は、目を見開いたまま固まる悠真に視線を向ける。

 悠真は、俺達の会話を聞いて、開いた口が塞がらないと言った様子で震える指を俺達に向けた。


「い、1日の間に何が……な、何なんだその睦まじい友人みたいなやり取りは……!?」

「「??」」


 特に自覚の無かった俺達は、お互いに顔を見合わせて首を傾げる。


「何言ってんだ、このクソイケメン?」

「……分からない」

「お前自覚ないのか!? 初めの頃は嫌悪の視線を露骨に受け! 必要最低限の会話以外してなかっただろ!?」

「……はっ、確かに……!」


 そう言えばそうだ!

 昨日の大変な出来事と、とんでもチートな異能力に意識が持ってかれててすっかり忘れてたわ。


「だがしかーし!! それはもう昔の話。悠真……俺達は昨日の時空の歪み攻略で熱い友情を交わしたんだ」

「ん。せんぱいとは、べすとふれんど」

「何があった昨日?」


 悠真が、俺と神埼がグータッチを交わす姿を、信じられないモノを見るかの様な目で見てくる。

 何故そんな目を向けてくるのか理解に苦しむが……察しの悪い悠真のため、手短に昨日の出来事を話した。


「インビジブルモンキーの群れに囲まれ、グリフィン相手に1人で時間稼ぎをした」

「よくお前今日元気で来れたな」

「ふっ、やっぱり人間にとって唯一の取り柄みたいな、ここ、の違いかな」


 俺がドヤ顔で自らのこめかみをトントンしていると……悠真が半目で呟いた。


「お前の頭で何とかなるなら全人類の7割は何とかなりそうだな」

「お、喧嘩か? 俺ならいつでもやってやんぞ。でも……残りの3割に入る恋花に免じて1発で許してやるよ」

「待ってよっ! 何か私、全く関係ないのにとばっちり受けてるんだけどっ!」

「「まぁ恋花だからなぁ……」」

「酷いよっ!!


 涙目で俺達の襟元を掴んで激しく揺さぶってくる恋花。

 やっぱり恋花は涙目の時が1番輝いている気がする。

 それはそうと、普通に首締まって苦しいのでやめて下さい。


「…………」

「神埼もそんな目で見るのやめて?」

「ん、普段から3人はそんな?」


 何故か俺達を化け物を見る目で見てくる神埼に、2人同時に頷いた。



「「もちろん」」

「待ってっ! それだと普段から私が2人の掌の上で踊らされてるって……っ!」

「「何分かりきったことを」」

「うわーーーんっ!!」

「……ん。3人の関係が、よく分かった」



 こうして、恋花だけがダメージを受けると言う結果で顔合わせは終わった。









「———お、丁度いい所にいるじゃないか」

「悠真。俺は今、猛烈に嫌な予感がする。何が言いたいか分かるな? 親友?」

「奇遇だな、怜太。俺も嫌な予感がする。勿論言いたいことも分かるぜ。親友」


 俺と悠真、恋花と神埼で下校しようとしていた時、バッタリ真希ちゃんと出会ってしまった。

 それと同時に、俺と悠真はいち早く危険を察知して頷き合い、無言で颯爽とその場を去ろうとする。

 しかし———。



「———逃げられると思っているのか?」



 無理でした。

 普通に肩をガッシリ掴まれました。

 それも異能使って俺達の行く手に転移してまで呼び止められました。


「は、ははっ……まさか逃げようなんて思ってませんよ……なぁ、怜太」

「え、お前、俺に逃げようって言ってきたじゃん」

「あ!? お、お前俺を売る気か!? 真希ちゃん聞いてください! 始めに逃げようって言ったのれ———むぐっ!?」

「———はははっ、悠真は相変わらず冗談が大好きだよな。でもさ……時と場合は考えような?」


 俺は、余計な事を口走る悠真の口を塞ぎ、表情だけの笑みを浮かべる。

 しかし悠真は、そんな俺を射殺さんばかりに睨んで来た。


 お、やんのか?

 上等じゃねぇか、そのイケメンフェイスを目も当てられない程ボコボコにしてやんよ。


「黙れ」

「「はい」」


 俺達は真希ちゃんの凍える瞳と殺気すら混じってそうな言葉にその場で正座する。

 やはりこの学校の生徒である以上、学校一怖い真希ちゃんには敵わないのだ。


「それで、真希先生は、何の用?」

「あぁ、少しお前達に頼まれて欲しいことがあってな」


 あぁ、本当に嫌な予感がする。

 だから今すぐ逃げたかったんだ。


「それで……頼まれて欲しいことって?」


 俺は不承不承と言う感情を隠すことなく4人を代表して真希ちゃんに尋ねる。

 普段なら俺の態度に文句を言ってくるはずの真希ちゃんだが、今日はいつになく真剣な表情で言った。




「———最近、この街で未確認生物の目撃情報が多発している。その正体を探ってくれ」




 ほら見たことか。

 やっぱり面倒事じゃないか。


 俺は昨日の今日で戦う羽目になることに辟易しながらも……どうせ逃げることなど出来ないので、仕方なしに真希ちゃんの言葉に耳を傾けた。


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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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