第13話 ボスモンスター②
「———は、ははっ……このバケモノめ」
俺は、前足を撃ち抜かれたと言うのに何事もなかったかの如く立ち上がるグリフィンに吐き捨てる。
徐々に神経毒の効果も薄まっているみたいだし……結構ピンチ。
「おーい神埼! まだか!?」
「まだ。私の方が少ない」
「あいよ。早くしてくれよ……そろそろマズいぜ?」
額から流れる汗が地面に落ちる瞬間。
俺は地面を踏み締め、疾駆。
グリフィンとの距離を詰めながら、『黒天使』と『白悪魔』の引き金を間髪入れず引いた。
———ヒューーーーッッ!!
風を斬って進む弾丸は一直線にグリフィンへと突き進む。
しかし、その弾丸は、グリフィンが生み出した風によってあらぬ方向へ飛んで行ってしまった。
あらら……やっぱり通常弾じゃ無理か。
なら———。
「これならどうだ……!?」
敢えて僅かな時間差を作って発砲。
縦一列に並んだ2つの弾丸は、空気を切り裂いて疾駆する。
そしてグリフィンの纏う風に触れる。
刹那———先行していた弾丸が爆発。
その爆発によって、追随していた弾丸が風の護りを突き破り、グリフィンの翼を撃ち抜く。
そう、悠真との戦闘の時に使ったのと同じ戦法だ。
と言うより、相手のガードを突破するための十八番みたいな戦法とも言える。
「キュルァアアアアアアア!?!?」
「叫んでるくせに突進してくんなやボケ!」
俺は効いてるのか効いていないのか分からないグリフィンに文句を言いながら素早く後ろに跳躍。
牽制も交えて常に一定の距離を保つ。
今回の俺の任務はあくまでも時間稼ぎ。
別に倒さずとも逃げ回って相手の魔力を減らしていけば実質勝ちみたいなものだ。
「そのはずなんだけどなぁ!?」
徐々に距離を詰められている状況に冷や汗が止まらない。
此方も必死に対抗しているのだが……殺さないとなると幾らか攻撃手段が制限されるため、戦況は悪くなる一方だった。
「キュルァアアアアアアア!!」
「くっ……うわっ!?」
俺が銃口を向けたその時。
突然足元に発生した猛烈な力を持った風に足を取られて体勢を崩し、舞い上げられてしまう。
咄嗟に空中で身体を捻って体勢を立て直そうとするが……その隙にグリフィンが眼前へと迫っていた。
グリフィンの鋭利な前足の爪が振り下ろされる。
「キュァァァアアア!!」
「ぐっ———ゴハッッッ!!」
寸前で身体と爪の間に2丁の愛銃を滑り込ませたものの……空中という踏ん張りの効かない場所。
力を流すことが出来ず、墜落。
俺は地面に叩き付けられた。
「先輩……!」
「う、五月蝿ぇ……お前、は、黙って、魔力を回復させろ……!!」
俺の叱咤に神埼が表情を歪める。
しかし彼女が攻撃されれば元も子もない。
い、痛てぇなくそ……。
い、息出来ねぇんだけど……!!
俺は浅い呼吸を繰り返し、何とか肺に酸素を送り込む。
しかし、そうしている間に、グリフィンは標的を俺から神埼に変えたらしい。
「キュルァアアアアアア———ッッ!!」
「……っ」
「神埼、避けろッッ!!」
木々を揺らす程の咆哮を放ったグリフィンは、クロウを戻して無防備となっている神埼に向かう。
俺は精一杯声を張り上げて警告するが、神埼は不意を突かれたせいで初動が遅れてしまっていた。
うぉぉぉまずいまずいまずい!
このままじゃ神埼が……いやクロウを出せば余裕なんだろうけど、アイツ頑固そうだし絶対出さねぇよな!?
酷評で悪いが、神埼の身体能力は十傑の中で最弱と言ってもいい。
そんな神埼が、武闘派なグリフィンと接近戦を行って勝てるわけがない。
…………仕方ねぇか……!!
「スキル———【復元】。10分前の状態に」
俺は奥の手であるスキル———【復元】を発動。
一瞬全身が光ったかと思えば、全身の痛みも傷も何もかもが消失。
文字通り、10分前の身体に戻った。
しかし、これだけでは終わらない。
「スキル———【加速】」
俺は数多のスキルの中から、1番スキルの存在を気取られない【加速】を選び、地面に落ちた『白悪魔』を拾って引き金を引く。
スキルの効果で普段の数倍以上も加速した弾丸が、グリフィンの顔面の真横を爆破。
———ドカァァァン!!
「キャルァ!?」
爆発の反動で弾き飛ばされるグリフィン。
俺は更に2発グリフィンに弾丸をぶち込んで、叫ぶ。
「神埼ぃぃぃぃぃ———ッッ!!」
「———ん、本当に感謝」
神埼が膨大な魔力を解放。
しかしその全てを制御し、グリフィンに向けて手を翳す。
「———【テイムマスター】」
膨大な魔力が鎖の形を取り、一瞬でグリフィンの身体を拘束、体内に吸収させる。
それだけに留まらず、グリフィンの胸辺りに紋章が浮かび上がった。
「……ふぅ。これでOK」
「……お前、息切れし過ぎじゃね?」
「……魔力全部使い切った。でも、これでグリフィンは私の。強さも上がってスーパーグリフィンへと進化した」
何だよそのバケモンみたいな異能力。
A級トップのグリフィンが強くなったらもうS級やん。
スキル使わないと100%勝てないやん。
俺は、指でVを作ってドヤ顔を披露する神埼を引き気味に見つめながら尋ねる。
「……因みにクロウは?」
「勿論、S級」
「生意気言ってすいませんでした」
おい、朝日奈。
どう考えても神埼に護衛は要らない気しかしないんだが?
俺にぺこぺこ神埼に頭を下げながら、神埼の護衛とかいう巫山戯た依頼をして来たどっかのクソ女に心の中でぼやいた。
こうして、何とか時空の攻略が終了した。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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