第9話 神埼琴音
『———神埼琴音。歳は貴方も知っている通り16で1年3組所属よ。世界で未だ例のない、時空の歪みに出現するモンスターを直接使役できる【テイムマスター】という異能を持っているの。貴方も知ってるでしょう?』
『まぁ見たことあるけど……それで?』
『彼女は是非とも
移動して1年生の教室の近くにある空き教室。
俺はその教室の中の椅子に座って昨日の朝比奈との会話を思い出し———。
「用って?」
「えっと……」
目の前で不機嫌を全面に出して俺を睨む神埼琴音の姿に、内心ため息を吐いた。
……どうやって護れと?
明らかに人選ミスってますよ。
正直今から『アンタを護るために一緒に行動させて貰うな』って言ったとしても100%の確率でにべもなく断られると思う。
寧ろこれで了承されたら此方が驚いて訊き返すだろう。
「ま、まぁまぁ落ち着いて。琴音ちゃん、だっけ? そんなに怜太を———」
「悠真先輩は黙って」
ま、まじかよ……あの悠真をしても機嫌を取れないだと……!?
こんなの完全に予想外だ……。
俺は悠真さえも辛辣に対応する神埼に驚愕する。
というか悠真でこれなら多分この学校内で彼女の機嫌を取れる人間はいないのではないのだろうか。
なら……。
「———よし、聞く気ないらしいし諦めるか」
「待て待て待て待て! そんなあっさり諦めようとするなよ!?」
俺が席を立って教室を出ようとすれば、ガシッと悠真が俺の肩を掴んで何やら戯言を言ってくる。
そんな悠真を俺は、呆れからくるため息を吐きながら半目で睨んだ。
「でも神埼は嫌がってんじゃん」
「それを説得するのもお前の仕事だろうが!」
「自慢じゃないが、俺にそんなコミュ力を求めてもらっちゃ困る」
「お前は十分コミュ力高いが!?」
「ハッ、それこそ戯言だな」
俺がコミュ力高い?
本当にコミュ力が高かったら今頃彼女出来てんねん。
お前を僻んでないねん。
「———何を、見せられてる?」
俺と悠真の言い争いがデッドヒートしていた時、完全に蚊帳の外と化した神埼が俺達2人を呆れた様子で呟く。
神埼の言葉は決して大きな声ではなかったが、口論している俺達にはやけにハッキリと聞こえ、俺達の口論を止めるには十分だった。
「何をって……そりゃあ諦めるか諦めないかの口論? なぁ、悠真」
「まぁ……」
「……もう良いから、早く話して」
「「え、今なんて?」」
先程よりも更に小さな声で何かを呟いた神埼。
ただ俺にも悠真にも残念ながら全く聞こえおらず、2人同時に反射的に聞き返していた。
神埼は全く聞いていない俺達にイライラした様子で声を荒げる。
「早く話して。5秒以内に話さなかったら出てく」
「お前を護衛しろって依頼を受けた」
「え?」
「ストレートだなおい!!」
俺の言葉に神埼が驚いた様子で瞠目し、悠真も何故か驚いた様にツッコんできた。
何か思っていた反応と違い、2人に視線を彷徨わせて首を傾げる。
「え?」
「『え?』じゃねぇよ。もう少し言う順序ってもんが……」
どうやら悠真は、俺の先程の言葉に苦言を呈しているらしい。
ただ……。
「別に気にしない」
「ほら見ろ」
「気にしないんだ……」
当の本人である神埼は全く気にしていない様子だった。
俺がほら見たことかとドヤ顔を悠真に送れば……悠真は疲れた様子で『後はお2人でどうぞ……』と匙を投げて椅子に座った。
そんな悠真を横目に、神崎が気怠げそうに尋ねてくる。
「それで、誰が護る?」
「勿論俺だけど……神埼は嫌だろ?」
「ん」
「交渉決裂。よし帰ろ———」
「———でも、お願いを1つ聞いてくれたら嫌じゃない」
ズバッと断言されて心が深く傷付いたため、さっさと帰ろうとする俺に、神埼が上目遣いで言ってくる。
窓から入った温かな風によって神埼の綺麗な黒髪が靡く。
…………。
い、一応内容を聞くだけ聞くか……。
さ、流石に聞かないのは失礼だしな!
け、決して上目遣いにキュンとしたわけじゃないからな。
俺はその言葉と神埼の上目遣いに動きを止め、心の中で御託を並べながら恐る恐る尋ねる。
「……因みにお願いって?」
「佐々木先輩が殺した分のモンスターを捕まえる」
「よし帰ろ———待てよ?」
俺はそんなクソ面倒なこと誰がやるか、と踵を返して教室を出ようと思ったが……ふと1つの案を思い付く。
天才的な名案を。
……それなら、明日の予知した所に連れて行けばよくね?
そう、明日の予知を神埼に手伝ってもらいながら適当なモンスターをテイムさせれば良いんじゃね、という案だ。
幸いなことに、明日の予知は『1時間以内に攻略しなければ外にモンスターが出てきて大変なことになる』というものである。
正に一石二鳥、一挙両得だ。
俺に得さえあれど、損はない。
明日の時空の歪みはスキルを使わずとも十分攻略できる難易度だしな。
そこまで考えた俺は、返答を待つ神埼に告げた。
「———乗った!」
こうして明日は、人生初の2人で予知の対処をすることになった。
それも美少女と2人きりで。
俺はそのことを夜に気付いて、心の中でガッツポーズをすると同時に、明日の服について悩むことになったのは言うまでもない。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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