第3話 真希ちゃん襲来

「———今日も予知か?」


 何故休むことを自分で伝えなかったんだとのお怒りを受けた後、真希ちゃんが教師としてでなく、従姉として尋ねてきた。

 優しい真希ちゃんのことだから、俺の秘密を唯一知っている身としてどうしても心配になるのだろう。


「うん。今日は比較的早く終わったけどな」

「……そうか。はぁ……頼むから事前に伝えていてくれ」

「……ごめん。次からは言う……多分」

「建前でもそこは絶対と言え」

 

 ポコッと軽く頭を叩いてくる真希ちゃんだが、別に痛くなく包み込むような優しさが滲み出ていた。


 全く……こんなに優しい人は中々居ないだろうな。

 てか真希ちゃん普通に美人なのに何で未だに彼氏が居ないんだ?

 あ、普段の男勝りな性か———


「……ま、真希ちゃん……? そ、その手は何ですか……?」

「ああ、少し怜太が余計なことを考えているような気がしてな」


 そう俺の頭に手を乗せ、段々と力を加え始める真希ちゃん。

 心做しか真希ちゃんの微笑みが鬼の顔に変化していき、瞳から感情が抜け落ちて行っているような気がする。

 そ、そんな暴力に訴えるから彼氏の1人も出来ない———



「痛ああああああああああ———ッッ!?」

「余計なことを考えるのはここか?」

「ご、ごめんなさぁぁぁぁぁぁ痛ああああああああああ———ッッ!!」



 無事、俺の頭は粉砕された。


 


 






「———うっうっ……あ、頭が……頭が馬鹿になる……」

「まだ11時なんだ。学校に今から来い。あまり休んでると留年するぞ」

「まさかの無視……わ、分かったよ、行けばいいんでしょ! 行けば!」


 俺が頭を押さえて結構ガチで泣居いていたのだが一向に相手にされず、あまつさえ学校に連行されることになった。

 所詮、姉のような存在に弟の俺は敵わないのだ。


 俺は真希ちゃんに急かされて仕方なくベッドから起き上がる。

 そして欠伸を噛み殺しながらクローゼットにある制服とポロシャツを取り出してボソッと一言。


「スキル———【装備】」


 そう唱えた瞬間、俺の手の中から制服とポロシャツが消えていつの間にか俺の身体に着込まれていた。

 俺は鏡の前で軽く違和感を調整して頷く。


「よし、完璧」

「……本当に無駄な能力だな、それ」

「失礼な。戦闘では全くと言っていいほど使えないけど、こと日常生活においてはマジで有能なんだぞ」

 

 呆れた様子でこちらを見ながら呟く真希ちゃんに、俺はジト目を向ける。

 こんなゴミ———有能スキルでも次元の歪みを攻略した報酬なんだから文句を言わないで欲しい。

 それに、スーツとか着るのが面倒な服たちも一瞬で着られるのは、スーツが当たり前の社会人にとって結構有能なスキルのはずだ。

 決して無能スキルなんかではない。

 寧ろ俺的には予知の方がよっぽど無能スキルだ。

 予知スキルなんか今すぐに消え去ってしまえ、クソが。


 俺がそう力説するも真希ちゃんには全く響いた様子はなく、寧ろ力説する俺を半目で見つめていた。

 そんな彼女は俺に手を差し出し、少しイライラした様子で言った。


「もう何でもいいから早く移動するぞ。あと少しで授業が始まる」

「うぃーっす……」


 俺はもう諦めて鞄を持ち、机に置いていた黒と白の2丁の拳銃をガンホルスターに入れて腰に付ける。

 学校ではスキルの存在を隠しているので、目立たないスキルを最大限活用しようと試行錯誤した結果———俺の主要武器は銃になった。

 勿論能力者にもモンスターにも普通の銃は効かない(結構簡単に避けられるし当たっても『痛っ』くらいで済んでしまう)ので特注の魔導銃だが。


「ふっ……それを与えてもう2年か。随分と綺麗に使ってくれているんだな」

「勿論。私的にこいつ等を使うのが1番好きだし……何より真希ちゃんから貰った大切な物だからな」


 そう、この2丁の魔導銃———『黒天使』と『白悪魔』は真希ちゃんからのプレゼントだった。

 俺が学校入学にあたって銃を使うことを真希ちゃんに伝えたところ……入学祝いとしてこの2丁を俺にくれたのだ。

 何方も大きさと見た目は昔の銃で例えるなら……デザー◯イーグルに非常に良く似ていて最高にイカしたカッコいい銃である。


 因みにこの厨二チックな痛い名前は、厨二病が未だに治らない日本一の魔導具職人が考えたらしく、既に銘が刻まれているので変えようにも変えられなかった。

 だが、性能はマジで良くて、今までこれ以上に優れた魔導銃を俺は1度も見たことがない。

 厨二チックな名前なのに性能が名前負けしていないのは流石日本一の魔導具職人といったところか。

 

 ここまで良いと値段が気になるところだが……流石に教えてくれなかった。

 ただ、彼は1年以上も予約が埋まっている超人気魔導具職人なので相当にお高いのは容易に想像できる。

 本当に感謝してもし切れない。


 俺は2丁から視線を切って真希ちゃんを見ると……何故か顔が真っ赤だった。

 目も泳いでいて、直ぐに照れていると分かった。

 

「……っ、そう恥ずかしいことを堂々と……な、何だその顔はっ!」

「……もしかして照れてるのか? へぇ〜〜真希ちゃんも可愛い所あるじゃん」

「う、五月蝿いっ! さ、さっさと行くぞ!」

「へいへーい」


 俺がニヤニヤと笑みを浮かべて揶揄からかえば、真希ちゃんは更に顔を赤くしてそんな様子を誤魔化すように———【転移】を発動させた。


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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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