双子の世界

@mofu910

第1話

1988年5月10日 8時

『おぎゃーおぎゃー』

産声が鳴り響いた。

母は双子を産んだはずなのに産声は一人から。

『この子はだめかも知れない。。。』

医者からそう告げられた。

『そんなのだめです!諦めません!!』

祖母は医者の言葉を振り切り

黒く小さく生まれた姉の足を持って

宙吊り状態で

『パーン パーン』

とお尻を叩いた。

『泣け!泣くんだよ!生きるんだよ!』

何度も叩いた。


その願いが通じたのか

『ふぎゃあ。。。ふぎゃあ。。。』

とか細い声でやっと泣いた。

『あぁ。。。良かった。』


こうして生まれた双子。

妹は姉の苦労など知りもせず

どっしり頑丈に生まれた。

姉の養分をすべて奪ってきたのだ。


リカちゃん好きだった母の影響で

姉妹は真紀、美紀と名づけられた。

リカちゃんの双子の娘がその名前

なのだそうだ。


真紀は肌が黒く髪はくるくる。

祖母はテンプルちゃんと呼んだ。

美紀は肌が白く髪は少しくせ毛な程度

母が溺愛していたと祖母から聞いた。


聞いたと曖昧な表現なのには理由がある。

実は私たち双子は

父と母が海に行ったときたまたま

出会い、行きずりでできた。

どうにか結婚までこぎつけたが

結局私達が1歳の頃離婚し

父方の祖父母に育てられた。

そのため母の記憶は無い。

一度写真を見せられた事があるが

お世辞にもきれいとは言えない人。


現在私達は35歳。

両親の離婚後、母に一度も会ったことは無いし、会いたいと思ったこともない。

私達も運良く母親になれているので、

妊娠や出産の苦労を知っている分、

双子として産んでくれたことには

感謝している。


そんな私達の

今までのヒューマンドラマを

小説にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

双子の世界 @mofu910

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画