第5話:ステータス改ざんにも裏がある
俺の現世からの固有スキル(?)、撫でスキルで子狐のあらゆるところを撫でくり倒しおなかを見せるまで悶絶させたところで、俺はこの『叡智への強制干渉』スキルをいろいろ試すことにした。
ちなみに、子狐は『も、もうお嫁に行けない……』とおなかを見せながらうなだれていた。
「とりあえずどこまで使えるんだ、これ? とりあえず自分のステータス見てみるか」
軽く意識するとすぐに脳内に情報が伝わってきた。
現実にないものが視界にあるような奇妙な感覚だ。
『種族:人間
名前:白井行人【???達の徒】
性質:???の残滓
適性:魔獣使い
階層:「人間領域Lv1」「神聖領域Lv0」「???領域Lv1」
ステータス
基本体力:10
基本耐性:10
エーテル適性:10
エーテル耐性:10
神聖領域干渉限界:2080/999999
スキル
「念話Lv3」「叡智への強制干渉Lv1」
固有スキル
「魔獣敵対無効」「神聖の拒絶」「人間からの乖離」「共鳴Lv1」』
「あ、念話がもうレベル3じゃん……あとは……うーん? うーん……やっぱ分かりづらいな……なんだよ神聖領域干渉限界って。なんで999999もあるんだよ」
と、思ったら神聖領域干渉限界の文字が光って説明が流れ込んできた。
『「神聖領域干渉限界」2090/999999:発狂まで997889
神聖領域に干渉した際の発狂限界。神の叡智へ干渉したり、神の領域に及ぶような魔法や行動を行うと上昇する。時間経過で低下するが、上限を超えた段階で発狂する』
「何この便利機能」
webブラウザみたいな機能だな。wiki○ediaが一番しっくり来る。
とりあえず、この数値はSAN値みたいなものなのだろう。一部のテーブルトークロールプレイングゲームにあるステータスと一緒だ。ラストファンタジア6にもあったな、禁術を使いすぎるとこの数値が溜まって発狂してダメージを負うのだ。
「いや、しかし分かりづらいわ。なんかスキル名が全部大仰しいんだよ。SAN値でいいだろ。大体そんな感じだろうし」
と、思ったらステータスの表記が変わった。
『種族:人間
名前:白井行人【???達の徒】
性質:???の残滓
適性:魔獣使い
階層:「人間領域Lv1」「神聖領域Lv0」「???領域Lv1」
ステータス
基本体力:10
基本耐性:10
エーテル適性:10
エーテル耐性:10
SAN値:2130/999999
スキル
「念話Lv3」「叡智への強制干渉Lv1」
固有スキル
「魔獣敵対無効」「神聖の拒絶」「人間からの乖離」「共鳴Lv1」』
思いっきりSAN値って書いてあるんじゃが。
「ウッソォ……」
そんな簡単に変わるんかい、と思わず突っ込みを入れずにはいられない。
だが、あくまで俺の脳内だけで改ざんされているのであって、本当のステータスは変わらないはずだ。鑑定魔法の改ざんと一緒である。そういうことならば、分かりやすいように徹底的に改造してみよう。
「階層はレベルでいいよな。叡智への強制干渉もハッキングとかでいいだろ。あ、と、は〜」
そして、数分後。
そこには変わり果てたステータスさんの姿があった。
『種族:ヒューマン
君の名は:撫でマスター白井【???達の徒】
そう、そして肩書きは:???の残滓
適性ジョブはなんと:魔獣使いだけど使役はありませぇん!ゴミ!
レベル:「Lv1」「神聖Lv0」「???Lv1」
ステータス、それは神から与えられしチカラ…
こうげき:10
ぼうぎょ:10
まほう:10
まほうぼうぎょ:10
SAN値:2578/999999
スキル、それは努力によって得られしチカラ
「テレパシーLv3」「ハッキングLv1」
固有スキル、それはロマン!
「魔獣フレンズ」「神なんてくそくらえ」「人間なんてやめてやる」「魂の共鳴Lv1」』
出来上がったものをしばし眺め、満足感に浸ること数秒。
「…………やりすぎた」
「きゅう……(なにやってるの?)」
「いや、なんか何でも出来るから面白くなっちゃって」
「きゅっきゅ(ちなみにだけど、改ざんすると他の人に覗かれた時にも反映されて見られちゃうからね)」
「あっはい……」
ちなみに子狐の言葉は念話Lv3になったからか、細かいニュアンスまで理解できるようになっていた。
しかし、SAN値がめちゃくちゃ上がっている。いくら上限が高いとはいえ、やりすぎたらしい。
そういえばさっきから鑑定するたびに増えている気がする。もしかして鑑定したり改ざんしたりするとこの数値が上昇するのか。触れているのか、深淵に……。
なら、最初から2000もあったのはさっき無理矢理『叡智への強制干渉』を取得したせいか。なるほど、このスキルの方が鑑定魔法よりも圧倒的に便利なのに鑑定士なんて職業があるわけである。確か、最初の時に見た教授や巫女はSAN値は2桁か3桁しかなかった。スキルを取得した瞬間に発狂したんじゃ話にならない。
というわけで、再度修正開始。今度は普通に分かりやすくしよう。
なんか今後会話に齟齬とか起きそうだし。あと、あんまりSAN値上昇しすぎても怖いし。
『種族:人間
名前:白井行人【???達の徒】
性質:???の残滓
適性:魔獣使い
レベル:「人間領域Lv1」「神聖領域Lv0」「???領域Lv1」
ステータス
攻撃力:10
防御力:10
エーテル攻撃力:10
エーテル防御力:10
SAN値:2678/999999
スキル
「念話Lv3」「ハッキングLv1」
固有スキル
「魔獣敵対無効」「神聖の拒絶」「人間からの乖離」「共鳴Lv1」』
完成。普通が一番である。ついでにSAN値の上昇具合もさっき改ざんした時よりも大人しい。やはりふざけすぎたのだ。もしも誰かにステータスを見せなきゃならなくなったらその都度元に戻せばいいだろう。
「きゅっきゅーう(ねえ、ところで)」
そこで、子狐が不服そうに話しかけてきた。
「なんだい子狐」
「きゅう……(子狐って呼ぶのやめてほしいんだけど。155歳なんですけど)」
「だって見た目子狐じゃん」
「ぎゃう!」
ガブリ。
「いってェ!!!」
「ぐるるるるるる(子狐って呼ぶたびに噛むね……)」
「あ、すいませんでした、ほんと」
「きゅう! きゅきゅう!(じゃあ名前で呼んで!)」
「えっと、ニナさん」
「きゅう(さんはいらない!)」
「ニナ?」
そこまで呼ぶと、ようやく満足したようにニナは尻尾を振った。
狐とは言えど、魔獣の考えることは分からない。
「ただの動物なら簡単に分かるんだけどねえ」
と、牧場主の跡継ぎである俺はひとりごちるのであった。
いや、そもそも155歳の時点で動物だろうが魔獣だろうが人間だろうが分かるものも分からない気もするのだけれど。
**
「なあ、オデット様」
ユキトとニナのいる場所からは少し離れる。5本の尻尾を持つ大狐と、美少女のような姿の8尾の狐は村の外で周囲を見回るようにして歩いていた。他に魔物もいない階層なので警備の必要もほとんどないのだが、一部だけは別だ。
次の階層、つまり、地下に続く入り口周辺だ。
次の階層には普通に魔物が存在する。よって、ここから魔物が上に上がってくることがあった。
「なんじゃ、アドルフ」
「いや、あの黒髪の奴。ユキトって言ったか。……あの場では知らんフリをしろって言われたからそうしたが……例の奴なんだろ?」
オデットの表情が曇る。彼女が何を考えているのかはその顔からは判別できなかった。
「……そのようじゃな。あの子は……儂らがずっと待っていたもの。間違い無いじゃろう。とうとうその時が来たということじゃ」
「……そうか。だが……」
アドルフが落胆するように肩を落とす。オデットも同様に額を抑えた。
「「弱すぎ」」
そして、2人揃ってため息をついた。
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