第4話:鑑定スキルには裏がある
というわけで修行編、開始……と言いたいところなのだが、どうやら俺はまともに動ける状態では無い。怪我が酷すぎる。
最初に俺が目覚めたとき大狐のアドルフが俺を尻尾で包んでいたのは、彼ら妖狐の上位種の体毛には触れているものを回復させる効果があるらしいからだそうだ。
上位種と言ったのはあの子狐には微弱な程度の回復効果しか無いからである。
魔物や魔獣には種族ランクというものがある。
下はG級から、上はSSS級までだ。
ちなみに、人間にも強さでランクがあって、このランクと照らし合わせることで魔獣や魔物と戦う時の基準にしている。
とりあえずリストアップするとこんな感じである。コメントはオデット作。
『G:人の脅威ではないのう
F:脅威ではないが、油断すると危険じゃのう
E:ちょっと危険じゃのう、討伐で報酬が出るのはここからじゃ
D:危険じゃのう
C:めっちゃ危険じゃのう
B:手を出すべきではないのう、複数人のパーティで相手すべきじゃ
A:大人数で対応すべきじゃ、軍が出ることもあるぞ
S:軍隊で対応しても無理かもしれんのう
SS:もう天災じゃ! めっちゃ強いのじゃ! 儂じゃ! 褒めても良いぞ! 天災だけに天才、なんちゃって(てへペロ)
SSS:生物の領域じゃないのう、バケモンじゃ!』
魔獣や魔物は普通に生活しているだけではランクは上がらず、戦闘経験などによって進化していくことで成長していく。
ちなみに子狐は当然のごとくG級。
アドルフはA級で、コメントでも(うるさく)主張しているがオデットはSS級だそうだ。
とんでもないものをベッドにしていたと今更ながら思った。
ちなみに、今はもう普通の藁布団で俺は寝ている。ある程度回復し命の危険は去ったので、もう近くにいる必要は無いらしい。自然回復と子狐の微弱な回復に任せるとのこと。
そういえば、アドルフは小屋を出て行く時は人間の姿に変化していた。どうやってあんな小さな入り口から入ってきたのだろうと思ったがそういうことらしい。
「お前は人間に変化できないの? 子狐」
「きゃーう」
『まだレベル1の私に期待しないで』……だろうか。
「なんでお前レベル1でしかもGランクなの? なんかオデットさん曰くもう150歳って聞いたんですけど。150年もなにしてたの? ニート?」
「ぎゃーう! きゅんきゅー、きゅー! きゅっきゅきゅ。きゅう」
うーん、解読不能。
というか、どうもこの子狐が何を考えているのか分かったのは俺の念話スキルのおかげだったらしい。
とりあえずレベルがあるスキルも最初はこれしかなかったので、こうして子狐と会話してもう一つのスキルと合わせてスキルレベル上げの特訓中である。
スキルレベルがあがれば念話の成功率も上がり、複雑な会話も可能になるそうだ。あとは遠距離になったり同時接続数が上がったりする。
ちなみに、今はレベルが上がったかは不明。なんとなく意思疎通できる回数は増えてきているが。
さて、ではどうやってレベルの上昇を確認するのか?
簡単にいうとステータスを見るしかない。
だが、ステータスを見るには鑑定魔法が必要だ。あの神官の法術も鑑定魔法だ。ちなみに、法術と魔術はどう違うのかと聞いた時のオデット先生のコメントがこちら。
『原理も仕組みも一緒じゃ! まあ、人間的に『魔』って言うとアレじゃろ? 宗教的にも。じゃから『法術』なんて言い換えておるんじゃな』
しかし、ステータスは神の叡智から抜き出している、と言っていた。教授のステータスにはしっかりと『法術』と記載されていたような気がする。その件については? と聞くと。
『神の叡智なんて言っても鑑定した後に神官に改ざんされまくっとるんじゃ。現に儂は『法術』なんてステータス鑑定で見たこと無いわ』
……とのこと。
そもそも鑑定の法術自体にそういう改ざん効果があるということだ。『魔術』を『法術』に置き換えたりする、と。一定のルールによって自動で書き換えられているらしい。社会の汚いところを見た気がした。都合のいいことである。
話が脱線したが、そのため、俺はこうして動けないうちにあるスキルの習得をさせられていたのだ。
それが、『叡智への強制干渉』である。
簡単に言うと、魔法無しで神の叡智、すなわちこの世界のデータベースに強制干渉しステータス情報やらなにやらを抜き出してしまうスキルだ。
対象を見て意識するだけで発動する便利版鑑定スキル。
「叡智への干渉」という魔法による鑑定と違いレベルシステムがあり、上がるに連れて情報開示量が増える。
まあ、要するに違法版鑑定スキルだ。
「しかも取るのは簡単なんじゃ。この鑑定石の粉末を体内に取り込めばそれで完了する、人間の身だと多少頭痛はするかもしれんがの?」
とは、あの悪戯妖狐の言葉。
魔法で鑑定するよりも楽で、さらに性能も上。完全上位互換でしかも習得するには粉末を飲むだけ!
そのはずだったのだが……。
「あんのキツネ女……」
俺はズキズキと脳を苛む頭痛にもう5時間は苦しんでいた。
やっぱり上手い話にはそれなりの理由があるのだ。
そりゃそうだろう、こんな変なスキルを取得するために鑑定石、おそらくあの鑑定士たちの杖の先についていた石だろうが、それを身体の中に取り込んでいるのだ。悪影響が無いはずが無い。
頭痛と言っても酷いとはいえ、絶叫を上げるようなものではない。なので、子狐と会話して紛らわせながらなんとか耐えていた。
「というかもしかして、お前を寄越したのって念話の練習じゃなくて、回復効果で脳みそを治し続けてるとかじゃねえよな……」
「……きゅ」
子狐は『知らぬが仏だね』と言った。あんのアマ。
子狐の回復能力が無かったら死んでたんじゃないか、これ。
と、そこで唐突に頭痛が消えた。
『スキル:叡智への強制干渉Lv1を獲得』
『スキル:念話Lv3に上昇』
「お、おお」
唐突に情報を理解する。一時はどうなることかと思ったが、どうやら無事に獲得できたらしい。頭の中に声がするというよりは、強制的に新しい知識が入ってきてそれを理解するという感覚に近い。オデットが言っていたがこれも鑑定スキルのおかげで知覚できるらしい。逆に言うとこのスキルがないとスキルレベルが上がっても分からないそうだ。
「お〜」
試しに子狐を鑑定してみる。
『種族:魔獣『ベイビーフォックス:G』
名前:ニナ・オデット・ルナーリア
性質:異端の獣
適性:なし
階層:「魔獣領域Lv1」「神聖領域Lv1」
ステータス
基本体力:78
基本耐性:64
エーテル適性:90
エーテル耐性:38
神聖領域干渉限界:0/4500
スキル
「念話Lv7」「叡智への強制干渉Lv1」
固有スキル
「癒しの毛」』
ふーん、体力が78で耐性が64ね。確か俺が全部10だったから……。
「あれぇ! 俺ステータス子狐以下じゃん!」
「きゅぷー」
あ、こいつ鼻で笑いやがった。念話使わなくても分かるわ。
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