陽キャアイドルの幼なじみはライバルと対等になりたい件について
――放課後。
ゲーム制作部の部活の時間に、向かい合って座った篠原が口を開いた。
「瀬尾くんは、笹山さんの話聞いてどう思った?」
「どうって……驚いたけど」
「私も驚いたけど、それ以上に、もっと対等になりたいって思った」
「対等……って?」
「もっと笹山さんと演技で張り合える存在になりたいってこと。……たぶん笹山さんの視界に私入ってないもん」
いじけたように言う篠原に、オレは苦笑いする。
「そ、そんなことないと思うけど」
「そんなことあるもん。絶対あるもん」
篠原が何に怒ってるのかわからない。
すると、メガネと文豪と音海が部室に来た。
メガネが言う。
「ちょっとー。ケンカはやめてほしいんだけど」
「ケンカはしてない」
「でも篠原さん怒ってるじゃん」
文豪に言われて、オレは口をつぐんだ。
すると、篠原が音海に小声で耳打ちする。
音海はしばらくして、言った。
「朝陽から聞いた話を踏まえると、瀬尾がよくないと思う」
「なんで!?」
「なんでかわからないところも含めて」
そう言われても見当がつかない。
篠原が言った。
「瀬尾くんにはこれからオーディションまでの1週間、私の練習につき合ってもらうから」
「この前も言ったけど、オレよりもっと上手い人と練習したほうがいいんじゃ……」
「この前も言ったでしょ。瀬尾くんがいいの」
篠原は全然引いてくれそうにない。
「……わかったよ」
オレが言うと、メガネと文豪と音海が声をあげた。
「応援してるぞー。オタク」
「頑張れー。オタク」
「私も応援してる。頑張って、瀬尾」
「いや、練習するのは篠原であってオレじゃないんだけど」
オレが言うと、音海が呟く。
「……瀬尾って本当に鈍いよね」
「どういう意味?」
「そのままの意味だよ」
「本当だよねー。歌織ちゃん。瀬尾くんって本当に鈍いよねー」
篠原はそう言って、イタズラっぽく笑った。
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