陽キャアイドルの幼なじみのライバルの本音を聞きたい件について

「え?」


 テレビに映った写真を見て、オレは思わず声を漏らす。

 仲よさそうな父、母、娘の3人で並んだ家族写真の真ん中に映っていたのは、小さい頃の笹山だった。

 小さい笹山は竹野美桜とお父さんと手を繋いで、明るい笑顔で笑っている。

 顔は幼いけれど、間違いなく笹山だ。

 司会者が言った。


「とってもかわいいですね! 竹野さんに似てます!」

「そうでしょ。うちの娘はかわいいんですよ」


 竹野美桜はそう言って笑った。


「娘は小さい頃から私に似てお芝居が好きで、中学でも高校でも演劇部なんです」

「そうなんですね。竹野さんの娘さんならきっと演技も上手なんでしょうね」

「光栄なことに、中学の時の演劇部の大会で主演女優賞をいただいたんですよ」


 そう言うと、中学生の時の制服を着た笹山がトロフィーを持っている写真に切り替わる。


「すばらしいですね。今後娘さんが芸能界デビューするなんてことはあったりするんでしょうか?」

「どうでしょうかね。母としては無理強いはしたくないので本人のやる気次第だと思ってはいます」

「竹野さんにはCMの後もおつき合いいただきます」


 司会者がそう言って、テレビの画面がCMになった。


「拓夜どうしたの? 驚いた顔して」


 姉ちゃんが聞く。


「いや、竹野美桜が娘って言ってた女の子、オレの高校の隣のクラスの同級生でさ」

「本当?」

「笹山美月っていう名前なんだけど」


 すると、母さんが言った。


「竹野美桜ってたしか本名だったはずだから、結婚して苗字変わったんじゃない?」

「そういうことか」


 テレビで見た竹野美桜は、どこにでも居るいい母親の雰囲気だった。

 でも、それにしてはさっき会った笹山が母親のことを話した時の表情が暗かった気がする。

 次の日、学校に行ったオレは篠原にそのことを話した。


「なるほどね。笹山さんのお母さんが女優さんなら笹山さんが演技力高いのもわかるし、びっくりするよね」

「オレも驚いたよ。笹山がテレビ出てるんだから」

「何話してるの?」


 すると、笹山に後ろから声をかけられる。


「笹山」

「笹山さん」


 オレ達は2人同時に声をあげた。

 オレ達が焦ったことを見抜いたのか、会話が聞こえていたのか、笹山は核心を突くように言う。


「もしかして、私の話?」


 その声は、いつもの浮わついたような笹山の声とは違って、真剣な声だった。

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