Voice.18
陽キャアイドルの幼なじみのライバルは距離が近い件について
――数日後。
「瀬尾くん」
学校に行くと、廊下で笹山に声をかけられた。
「おはよう」
「笹山。おはよう」
「じゃーん。これ見て」
そう言って、笹山はオレにスクールバッグにつけた柚木真奈さんが演じている小方美奈のアクリルキーホルダーを見せる。
「あ、美奈ちゃんのアクキー」
「このあいだ瀬尾くんの話聞いてから、いろいろ調べてゲーム買って全部クリアしちゃった」
まだ笹山に声優の話してから1週間くらいしかたってない。
「早いな」
「ノベルゲームっていうの初めてやったけど、紙の小説みたいに没入感あって私に合ってたみたい」
「ならよかった」
「『IVORY ALBUM』のストーリーもよくて、どのキャラクターの話も共感しちゃって」
「わかる。ストーリーいいよな」
すると、誰かに後ろから声をかけられた。
「瀬尾くん」
いつもより冷たいその声に振り向く。
「し、篠原」
「2人いつの間に仲よくなったの?」
笹山が首をかしげて言った。
「ゲームの話してただけだよ」
「ふーん。そっか。ゲームの話かー。へー」
篠原の感情が読み取れない。
でもなんかまずいことはわかる。
「し、篠原。昼休みちょっと話あるんだけど」
「いいよ」
そして、オレは屋上で篠原と2人っきりになった。
「篠原」
「何? 瀬尾くん」
篠原は答えてくれるけれど、目が合わないし、声も刺々しい。
「怒ってる……よな?」
オレがそう言うと、篠原はオレのほうに歩み寄って言った。
「当たり前でしょ」
そして、続ける。
「相手は私が演劇部でいつも見てる笹山さんだし、私が好きなゲームの話してるし、……瀬尾くんは楽しそうだし」
「いや、オレはただ笹山と話をしてただけで楽しそうにはしてないんだけど」
「でもそう見えたよ。『興味持ってもらえて嬉しい』みたいな表情してた」
「それは、笹山が何も知らなかったからっていう前提があったからで、オレは――」
「何?」
篠原に聞かれて、言葉に詰まった。
そして、息をのむ。
それから、言った。
「オレは、他の女子と話すより、篠原と話してるほうが楽しい」
しばらくして、篠原は小さく吹き出した。
「……なんだ。そっか。不安にならなくてもよかったんだ」
「どうかしたのか?」
「なんでもないよ。安心しただけ」
その時。
5時間目が始まる予鈴のチャイムが鳴った。
「そろそろ、教室戻ろうか」
「ああ」
そして、オレ達は教室に戻った。
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