Voice.17

陽キャアイドルの幼なじみの友達と打ち解けられた件について

 木暮は、自分が描いたイラストを使って自分が持っている服の説明をしてくれた。


「――これで服の説明は全部なんだけど」


 そして、オレを見て言った。


「まあ、まだわからないって顔してるよね」

「ご、ごめん」

「謝ることないよ。女子の服って種類たくさんあるからいきなり説明されてもわからなくて当然」


 それから、続ける。


「ってことで、実際着てるところ見たほうが早いよね」


 木暮はそう言うと、オレ達男子を廊下に出した。

 ――そして、10分後。


「おまたせ。入っていいよ」


 木暮に声をかけられて、オレ達は部屋の中に入る。

 そこには、木暮の私服を着た女子のみんなが居た。

 オレ達は思わず声をあげる。


「みんなめちゃくちゃ似合ってるよ!」


 メガネが言うと、木暮は誇らしげな顔をして言った。


「当然でしょ。私が選んだ服なんだから」


 すると、篠原が言った。


「夕乃、わざわざ服着なくてもよかったんじゃない?」

「服って着ると立体感出るからキャラデザのイメージしやすくなると思って」

「そうだけど……この服かわいすぎない?」

「かわいすぎるくらいの服着たヒロインのほうがいいでしょ」


 篠原の服は、ピンクの桜柄でフリルのついた長袖のワンピースだ。

 たしかにふだんの篠原の服装とは少し服の系統が違う。

 すると、木暮が言った。


「瀬尾。試しに今服着てる朝陽をスケッチしてみて」

「わかった」


 オレは持ってきたスケッチブックに、篠原を描く。

 しばらくして、完成したスケッチを木暮に見せた。


「うん。いい感じ」

「じゃあ――」

「この調子で私達もスケッチしてみて」

「……わかった」


 しばらくして帰る時間になり、オレ達は木暮の家を出る。

 みんなが外に出てから、オレは玄関で木暮に聞いた。


「木暮」

「何?」

「どうしてオレにいろいろ教えてくれたんだ?」


 すると、木暮はオレを見る。


「最初は私が服のデザイン手伝ってもいいかなって思ったんだけど」


 そして、続けた。


「瀬尾が自分で描けるようにならなきゃ意味ないから。だから教えたの」


 その理由を聞いて、オレは嬉しくなる。


「そっか。ありがとう、木暮」


 すると、木暮は言った。


「また絵で困ったことあったらいつでも聞いて」

「ああ。そうする」


 オレは木暮と少しだけ打ち解けられた気がした。

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