Voice.16

陽キャアイドルの幼なじみの友達に協力してもらった件について

 ゴールデンウィークが明けた5月。

 ゲーム制作部で作りたいゲームの方向性が決まり、天沢先生の許可も出て、オレ達は本格的にゲーム作りに励んでいた……のだけれど。


「女子の服の構造がわからない……」


 オレのせいで思わぬところで詰まっていた。

 ゴールデンウィークの後半の休日を全部費やしたのに、イラスト担当のオレのヒロインのキャラクターデザインがまったく進んでいなかった。

 ゲーム制作部の部室で悩んでいると、メガネが言った。


「オタク、姉ちゃん居るんだから参考に服貸してもらえば?」

「姉ちゃんの服はゲームでヒロイン達が着るような服じゃないんだよな」

「あー、そういうことか」


 すると、文豪が聞いた。


「じゃあ、篠原さんと音海さんはどう?」

「私は着る色がかたよってるからなー」


 篠原が言う。

 音海が言った。


「私はシンプルな服が好きだからたぶんゲームに使いたい服の系統とは違う」

「そっか」


 そして、どうしたらいいか悩みながら、美術部がある日にスケッチブックを眺めていた、その時。


「どうしたの?」


 隣で絵を描いていた木暮に、声をかけられた。


「その、別の部活で作ってるゲームの服のデザインがわからないところがあって……」

「ちょっとそれ見てもいい?」

「は、はい」


 木暮に言われて、オレはスケッチブックを見せる。


「ありがとう」


 木暮は黙ってスケッチブックを開いて、オレが描いた絵を見た。

 人に目の前で絵を見られるのは久しぶりだから、この空気めちゃくちゃ緊張する。

 そして、木暮はゆっくりと口を開いた。


「たしかに、女の子キャラの服うまく描けてないところがあるね」

「やっぱり木暮もそう思うか?」


 木暮はうなずく。


「着せられてる感じがするっていうか、不自然っていうか」

「どうすればいいんだろう」


 オレがため息をついてそう言うと、木暮は考えるような仕草をして、言った。


「じゃあ、今度の日曜日、私が言う場所に来て」

「え?」


 そして、木暮は言葉の続きを言った。

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