Voice.11 こうしないと遅れちゃうから
陽キャアイドルの幼なじみと本屋に行った件について
オレ達がゲームセンターのクレーンゲームで遊んでから文豪のほうに行くと、文豪はクイズのアーケードゲームをやっていた。
メガネが言う。
「あ、クイズトリックアカデミーやってる」
「今最終問題で大事なところ」
「頑張れー」
メガネがそう言って、オレ達は後ろから文豪を応援することにした。
「最終問題」のテロップが出て、問題が表示される。
「『ハートタッチラブキュア!』の主人公の名前は
クイズでよくある「ですが」という形式のひっかけ問題だった。
ラブキュアはラブリーとキュアを合わせた言葉で、変身ヒロインもののアニメだ。
1年ごとにヒロインが代わり、『ハートタッチラブキュア!』の主人公、花咲さくらは柚木真奈さんが演じている。
問題文を聞いた文豪は固まった。
「ヤバい、オレ女の子向けのアニメわからないんだけど……」
「オレも」
メガネが言う。
「私もラブキュアはあんまり見たことない」
音海が言った。
オレは柚木真奈さんが出てたから観てたけど、いざ答え教えようとしたらキャラが多すぎて覚えてるラブキュアの名前が混ざってる。
すると、篠原は呟いた。
「……キュアチェリー」
「え?」
その言葉を、オレ達は聞き返す。
すると、篠原は切羽詰まったように言った。
「答えはキュアチェリーだよ文谷くん! 時間なくなっちゃうから早く答えて!」
「わ、わかった」
篠原にせかされて、文豪は答えを入力する。
「正解」のテロップが出て、ゲームクリアの効果音が流れた。
「篠原さんありがとう! 助かった!」
「どういたしまして。私ハートタッチラブキュアは全話観てたからすぐ答え出てきたの」
篠原がラブキュアを観てた理由がオレと同じで柚木真奈さんが出てたから、という理由なのは簡単に想像できた。
「よし。ひととおり遊んだし、次は文豪の好きなところ行こうぜ」
メガネの言葉で、次は文豪の好きなところに移動する。
行き先は本屋だった。
「すごいな。めちゃくちゃ本あるじゃん」
メガネが言うと、文豪が説明した。
「この本屋はオレが知ってる中でも一番大きい本屋だからな。ラノベだけじゃなくて一般文芸の小説とか漫画とか、家の近くの本屋よりもたくさんある」
店の中には等間隔で棚があって、そこには本が並べられている。
カフェスペースもあって、飲みものを飲みながら本が読めるらしい。
広すぎて、ちょっとした迷路みたいだな。
そして、オレ達はそれぞれ好きな本を見て回ることにした。
オレは漫画コーナーで漫画を眺めて、気になるものを買う。
それから、みんなが居るところに戻ろうとした時。
近くで本を落とす音が聞こえた。
音のしたほうを見ると、女子が膝をついて床に落とした本を拾っていた。
「大丈夫ですか?」
駆け寄って、一緒に本を拾う。
「す、すみません」
その声に顔をあげる。
すると、目の前に居たのは――。
オレ達のあいだで話題になっていた、隣のクラスの笹山美月だった。
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