陽キャアイドルの幼なじみにライバルができた件について

 オレが美術部に入部届を出すために美術室のドアを開けると、そこには木暮が居た。


「……え?」


 なんでここに木暮が居るのかわからなくて、オレは驚く。

 木暮はオレに気づいて、肩をびくつかせた。


「瀬尾が来る前にこれ出そうと思ったのに……!」


 木暮はそう言って、不機嫌そうにうつむく。


「こ、木暮も美術部入るのか?」


 オレがそう言うと、木暮はオレに歩み寄って言った。


「やっばり私のこと覚えてないんだ」

「え?」

「私、中学の時、美術の展覧会で瀬尾の次の賞だったんだよ」


 言われてみれば、中学生の時美術部の展覧会でオレの絵が選ばれた時、木暮の名前を見た気がする。


「なんとなくだけど思い出した」


 だから最初からオレにずっとそっけなかったのか。

 すると、木暮はため息をつく。


「瀬尾が美術部に仮入部してるのわかってたから、仮入部期間中どこにも部活入らないで、今日入部届出しに来たのに」


 そう言われて、オレは木暮をなだめるつもりでこう言った。


「オレのことなんて気にしなくていいよ。美術部では誰とも話さないで1人で絵描くつもりだから」


 すると、木暮はオレを見透かしたように淡々と言う。


「そうやってすぐって言うのやめたほうがいいよ」

「……でも、自分が人と話すの苦手なのは昔からそうだし」


 すると、美術部の先輩の女子がドアを開けて入ってきた。


「ねえ、もしかして美術部に入部希望の1年生?」

「はい」


 2人同時に言う。


「私部長だから、入部届預かるよ。入部してくれてありがとう」

「こちらこそ、これからよろしくお願いします」


 そして、美術部に入部届を出してから、オレが1人で帰ろうとして昇降口に向かうと、篠原が居た。


「あ、瀬尾くん。今帰り?」

「ああ。今美術部に入部届出してきたところ」

「そっか。私も演劇部に入部届出してきたよ」

「演劇部ってどんな雰囲気なんだ?」

「えーっと、先輩も先生もいい感じの人で、みんなまとまってて、いい劇作りたいってやる気に満ち溢れてる」

「わりと一人一人で活動してる美術部とは全然違うな」

「そうかも。みんな中学も演劇部だった子ばっかりだから、私ももっと頑張らないと」


 そして、篠原は何かを思い出したように言った。


「あ、それと、今日体育の授業で一緒になった2組の子も居るんだ」

「けっこうみんなから注目されてた人か?」

「うん。私がポール拾った子。笹山美月ささやまみつきちゃんっていうんだけど、あの子すっごく演技うまいんだよね」

「今日見た感じからは想像つかないけど」

「見たらきっと驚くよ。私も最初普段の笹山さんと違いすぎて驚いたもん」


 そして、オレは明石達と帰る篠原を見送ってから、メガネと文豪と3人で家に帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る