陽キャアイドルの幼なじみと熱意を伝えた件について
――そして、数日後。
オレ達は音海を放課後の視聴覚室に呼び出した。
「何? 部活に入るっていう誘いなら断ったはずだけど」
椅子に座った音海が言う。
前に立った篠原は、笑顔で言った。
「うん。だから、今日はこうして説明しにきたんだ」
「説明?」
「私達には、音海さんが必要だってこと」
「……そう」
オレがカーテンを閉めて、視聴覚室の電気を消す。
それから、メガネがパソコンを使ってスライドを出した。
部活を作りたいと思った理由、活動内容など、基本的な説明をしていく。
篠原が話し終わってオレがカーテンを開け、電気をつけると、しばらくしてから音海はこう言った。
「篠原さん達がゲームを作りたいのはわかったよ。でも私は――」
「本気で音楽やりたいから」
篠原の言葉に、音海は目をみはる。
「なんで私が言おうとしたことわかったの?」
篠原は微笑む。
「なんとなくね」
今までのはただの説明、ここからが本題だ。
「音海さん、本気で音楽やりたいんでしょ?」
音海は目をみはる。
そして、うつむいて続けた。
「……そうだよ。でも、他人とぶつかるのが怖い」
明石や木暮が話していたことと、そこから考えたオレ達の予想が合っているとすれば、音海はたぶん――。
「私、自分に嘘がつけないんだ」
――当たっていた。
音海のことを話した時、木暮が言っていた。
音海さんはわざと自分から人を遠ざけてる気がする、と。
「私は本気なのに、他人と熱量が違いすぎて、今まで人とぶつかってきた。だったら1人のほうがいい」
音海の言葉を聞いて、篠原は笑う。
「それなら大丈夫だよ」
そして、言った。
「私達は同じだから。本気でゲームを作りたいって思ってる。そのためには、本気の音海さんの歌が必要なの」
オレ達も前に出ていく。
メガネが言った。
「そうそう。オレ達はほんのちょっとやそっと本音言われたくらいで折れないよ」
「だな。むしろ燃えるタイプ」
文豪が言う。
オレはそれにツッコミを入れた。
「それは2人だけだろ。オレと篠原は違う」
オレがそう言うと、メガネと文豪はえー、と声をあげた。
それを見て、篠原が吹き出す。
「でもみんな、何かを作りたいって気持ちは同じでしょ?」
その問いかけに、オレ達は迷いなくうなずいた。
「もちろん」
それを見て、音海はため息をつく。
そして、立ち上がって口を開いた。
「……わかった。入るよ、部活」
その言葉を聞いて、オレ達は声をあげる。
「や……やったー!」
オレ達の反応に、音海はそっぽを向いた。
すると、篠原は音海をまっすぐに見つめる。
「これからよろしくね! 歌織ちゃん!」
その笑顔と声に、音海は目をみはった。
そして、微笑む。
「……うん」
それから、こう返した。
「よろしく。朝陽」
――こうして、ゲーム制作部は正式な部活になった。
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