Voice.6 何かを作りたいって気持ちは同じでしょ?
陽キャアイドルの幼なじみと一匹狼アーティストを部活に誘った件について
「私達、カラオケで会ったよね!?」
篠原が笑顔で言う。
音海は驚いたような表情で声を漏らした。
「は?」
「このあいだ私が池袋のカラオケから帰る時、ロビーで落としたハンカチ拾ってくれたでしょ? 私、あの時声聞いてから音海さんのことがずっと気になってたんだ」
「……そ、そう」
そういえば、前にオレと篠原が池袋のカラオケに行った時、篠原が誰かとそんなやり取りしてたような気がする。
篠原は続けた。
「もしよかったら、私達の部活に入って歌ってくれないかな? ゲーム制作部っていうんだけど――」
すると、音海はそっぽを向いて言った。
「……ごめん。カラオケには居たけど、篠原さんと会ったことは覚えてない」
「そうなの?」
「それに私、部活に入ってる暇なんてないから」
そして、音海はオレ達とすれ違う。
「悪いけど、音楽やってる人探してるなら他当たって」
それから、屋上のドアを開けて帰っていった。
「ダメかあ……」
ドアが閉まってしばらくした後、全員で肩を落とす。
メガネが言う。
「せっかく5人目の部活の仲間見つけたと思ったのになー」
「あの感じだと、説得は厳しそうだな」
文豪が言う。
「でも……」
篠原が言った。
「すっごく綺麗な声だったよねー!」
その言葉に、みんなでうなずく。
オレは言った。
「たしかに、あの歌の上手さをほっとくのはもったいないよな」
メガネが言った。
「オレは確信した。あの歌があれば、オレ達が作りたいゲームに彩りが出る、って」
「じゃあ、どうやって音海さんに部活に入ってもらうんだ?」
すると、メガネは待ってましたとばかりに誇らしげな顔をする。
「オレにはもう考えがある」
そして、言った。
「プレゼンするんだよ」
「プレゼン?」
メガネの言葉を聞いて、オレは首をかしげる。
すると、メガネはこう説明した。
「オレ達は音海さんに部活に入ってほしい。でも今本人に断られた。でもどうしても入ってほしいならオレ達の部活には音海さんが必要だってことを音海さんに伝えるんだよ」
「その方法がプレゼンってこと?」
篠原が言う。
メガネはうなずいた。
「そう。まあ簡単にいうと音海さんに向けた部活説明だな」
そして、続けた。
「それで、そのためには、まずオレ達が音海さんがどんな人か知る必要があるんだ。だから――」
――次の日。
オレと篠原は音海がどんな人なのか聞き込みをすることにした。
まずは明石に聞いてみる。
「音海さんの印象?」
「うん」
「すっごくかっこよくて綺麗だよねー。あんなふうなクールな性格憧れるよー」
「何か気づいたことはない?」
篠原が言うと明石は考えるような仕草をして、言った。
「んー、1人が好きなのかな、って思ったりはするよねー。冷たいわけじゃないんだけど、誰も寄せつけない雰囲気があるっていうか」
「そっか。ありがとう真昼」
次に、明石の隣に居る木暮に聞いてみる。
「夕乃は?」
すると、木暮は口を開いた。
「この前、軽音楽部に入ってほしいって言われて『本気で音楽やりたいから』って断ってるところなら見たよ」
「本当に?」
「うん。でもなんか、断った後寂しそうな顔してた」
木暮はうなずく。
それから、木暮は音海が部活を断った時の話をした。
そして、聞いたことを昼休みの時間の屋上で2人にも伝える。
文豪が言った。
「ふーん。なるほどな」
「文豪、何かわかったのか?」
オレが聞くと、文豪は得意げに笑う。
「人の気持ちを考えるのは文系のオレの得意分野だからな」
そして、続けた。
「それで、これはオレの推測なんだけど――」
オレ達は文豪の話を聞く。
言われたのは、点と点が繋がるような話だった。
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