陽キャアイドルの幼なじみと部活を作ることになった件について

 ――次の日。

 オレが学校に行くと、ちょうど登校時間が同じになったメガネと文豪が声をかけてきた。


「おはよう、オタク」

「おはよう。メガネ、文豪」


 昇降口でローファーを上履きに履き替えながら、オレはメガネに聞く。


「そういえば、部活を作るのはいいけど、なんでゲーム制作部なんだ?」


 すると、メガネは目を輝かせて言った。


「オレ、前から3人で何か作ってみたいと思ってたんだ。それで、ゲームなら3人の得意なこと生かしておもしろいゲームができるんじゃないかって思ってさ」

「絵とプログラミングと小説か。たしかにゲーム作れそうかも」


 3人で教室に向かって歩きながら、メガネは続ける。


「それで、担任の先生に昨日相談したら、顧問の先生と部員5人で部活作れるって言われたんだけど……」

「顧問と部員が足りないな」

「そう! 顧問の先生はオレが仮入部してるパソコン部の先生からゲームについて詳しい先生紹介してもらえることになったんだけど、少なくとも部員があと2人は必要なんだよ。だから、部活に入ってくれる仲間を探そうと思うんだけど……」


 その時。


「なになに? なんかおもしろそうな話してるね」


 金色のショートボブの髪の女子に、いきなり声をかけられた。

 その女子は、篠原とよく一緒に居る友達だった。


「私、同じクラスの明石真昼あかしまひる。何話してるの?」


 メガネは口を開く。


「ゲームを作る部活作ろうと思ってるんだ。明石さんゲーム興味ある?」


 明石は軽い口調で笑って言った。


「うーん、ゲームかー。スマホのパズルゲームしかやってないからあんまり興味ないや」


 やんわりと断られて、オレ達は少し落ち込む。

 明石は続けた。


「でも、何かあったら手伝うよ」


 そう言われて、一気にテンションが上がった。


「オッケー。その時は頼む」

「よろしくー」


 そして、明石は教室に入って、篠原のほうに向かう。

 オレ達が教室に入ると、その先には篠原の他にもう1人女子が居た。

 茶色の髪のセミロングの女子は、オレ達のほうを黙って見つめている。

 不思議に思っていると、目をそらされた。

 オレは首をかしげる。

 その後、担任の先生が来て、そのまま授業を受けて、昼休みになった。

 3人で購買で買ってきたパンを食べる。

 ブリックパックの飲みものを飲みながら、文豪が聞いた。


「なあ、ふと思ったけどゲーム作るのにどんな人が必要なの?」


 メガネが数えるように指を折りながら言う。


「ネットで調べてみたけど、絵を描くイラストレーター、ソフトを作るプログラマー、脚本を書くシナリオライターの他には、音楽を作る作曲家とか歌手、キャラクターに声をあてる声優が必要かな」

「へー。じゃあ少なくともオレ達入れて5人以上にはなるんだな」


 文豪が言うと、メガネはうなずいた。


「2人とも、誰か部活に入ってくれそうな思い当たる人居ない?」


 オレの頭に篠原の姿がよぎる。


「1人居る……けど……」


 けど篠原がオレ達の部活に入るともしかしたら篠原の秘密がバレるかもしれないし……。


「けど?」


 無意識に呟いた瞬間、2人に詰め寄られて思わず焦る。

 オレはせいいっぱい取り繕った。


「けど……その人ゲームに興味ないって言ってたからオレ達の部活に入ってくれるかはわからないんだよな」


 ごめん篠原、本当は興味あるよな。

 すると、文豪が言った。


「でも、わからないってことは入ってくれるかもしれないってこと?」


 とっさに口に出した細かい言葉の意味をツッコまれる。

 さすが文豪、いつも小説書いてるだけあって鋭い。


「あ、あー……まあそういうこと……」


 メガネが言った。


「じゃあオタク、その人に頼んでみてくれよ。『オレ達の部活に入ってほしい』って」


 その展開は絶対避けたかったのに!

 オレはそう心の中で叫んで、苦笑いをするしかなかった。


「……わかった。頼んでみる」


 ――そして、放課後。

 オレは篠原の家に行って、家の前で篠原に部活に入ってほしいことを説明する。


「え!? ゲーム制作部!? 入りたい!」


 すると、篠原に話した瞬間、二つ返事でオーケーだった。


「篠原ならそう言うと思った。でもいいのか? もしかしたらオタクだってバレるかもしれないし、オレ達文化部と違って体育会系の演劇部と兼部になるだろ?」

「そこはバレないように私が頑張るところだよ。みんなも兼部するのは一緒だし、演技の経験を積むのはいいことだし。どんなゲーム作るかはもう決めたの?」

「作ろうと思ってるのはノベルゲームで、案で出てる話はこんな感じ」


 そう言って、オレは放課後に3人で考えた案をまとめた冊子を手渡した。

 学園恋愛ものにファンタジー、いろいろな案を出した紙を、篠原は楽しそうに見てくれる。


「3人でもうこんなに考えたんだ」

「昼休みに3人でアイディア出し合ってたら盛り上がって、紙が1枚じゃ足りなくなった」


 すると、篠原は笑顔で言った。


「私もどんなゲームになるか楽しみ。演技の勉強、頑張るからね!」

「オレもいい絵が描けるように頑張る」


 ――こうして、ゲーム制作部の部員が4人になった。

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