第50話 ジェファーソンの言葉


 腹が立ったら、しゃべる前に十まで数えよ。

 うんと腹が立ったら百数えよ。


  ―――トーマス・ジェファーソン (アメリカの大統領)



 アメリカ合衆国・第3代大統領のトーマス・ジェファーソンは、アメリカ独立宣言を起草したことで有名です。

「アメリカ合衆国建国の父のひとり」と称されたそうです。


 ニュースなどで殺人事件が報道される時、「ついカッとなってやった」と短絡的な動機が語られることがあります。


「怒り」という一時の感情は、人を支配し、冷静さを失わせます。

 そして、その勢いで取った行動は、ほとんどの場合、後悔する結果となります。


 殺人や暴力とまではいかなくとも、イライラしていると、つい汚い言葉やキツイ文句を周囲にぶつけてしまい、


「なんであんなこと言ってしまったんだろう」


 と後になって反省した経験は、誰にもあると思います。


 もしも頭に血が上がって、そのテンションのまま、良くない言葉を吐き出そうとしているのなら……この言葉を思い出して、心の中で十秒ほど数えてみましょう。

 さっきの「怒りMAX」状態から少し収まって、落ち着いた気持ちになるはずです。


 心理学的にも「同じ感情を長時間持続するのは難しい」というデータがあり、苛立ちはそこまで長持ちしないのです。

 近い未来の自分が「なんであんなことで怒ってたんだろう」と、うまく処理してくれます。


 昨今では「アンガーコントロール」という言葉もあり、上司が部下を感情的に𠮟りつけることがないように、自分の中の「怒り」を「操る」考え方もあります。


 ちなみに、腹が立った時、十秒数えても、百秒数えてもダメな人には、フランスのことわざをどうぞ。


「復讐という料理は冷まして食べるものである」


 時間が経過すれば許せる程度のこと、勢いで復讐するより、一旦落ち着け……という意味かと思いきや、

「消えない復讐心は本物であり、時間をかければ周到な準備ができる、じっくり冷徹にやり返せ」

 という、深くて怖い意味がある言葉です。

 料理に例えるあたりが、フランスのお国柄っぽい。


 大抵の場合、冷めた料理は美味しくないですから、時間が経ちすぎちゃうと、復讐とかどうでもよくなりますよ、きっと。

 「平和な日常」という、目の前の温かい料理を味わおう。

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