仕事を終わらせ、1人でナカマ食堂へと向かう地下道を歩く。夏も終わりに差し掛かり、この地下道も少しひんやりしてきた。ここもいつだれが整備しているのか分からないしいつ作られたのかも分からないが、常に一定の清潔感を保っている。俺がここを通い始めたのは20年ほど前だったか…その頃から変わったことと言えば、店前の扉が厳重になり、会員証をかざすリーダーが取り付けられてたことだろうか。それまでは扉の前にチェック担当の従業員が立っていたのだが、時代は変わるものだなぁ。

 「え、今日休みか…」

 店の前まで着くと、”本日臨時休業”の看板が釣り下がっていた。たまにあるんだよ、臨時休業。まぁ大将1人でやっているからしょうがないんだけど、何も予告なしなものだから、長い地下道を歩いた後にわかる臨時休業の看板は寂しい…。仕方がない、急だが妻の家に帰る連絡をするとするか。

 俺の家庭は別居婚というやつだ。決して仲が悪いなどという理由ではないし、どちらかというと仲がいい友人といったところだろうか。一緒に住んでもいいのだが、こんな仕事をしている身としては身内に危害が及ぶことも想定しておかないといけない。妻も俺の仕事を理解しているので、たまに会う程度になっている。

「もしもし、今家か?」

「そうよ、えっ今日帰ってくる?」

「ちょっと予定が変わってな。いいか?」

「運よく夜ご飯作りすぎたなぁって思ってたところなのよ。早く帰ってらっしゃい」

「分かった」

 妻はナカマ食堂と違って肉料理が大得意だ。特にローストビーフはよそでは食べられなくなるほどに絶品なのだ。さて、今日はなにを作ったのか。


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