秘密基地(遊び道具入り地下室&温泉つき)
大丈夫。ボクは冷静だ。こいつに何を言っても無駄なのは分かってることだから。
改めて、ログハウスに入ってみる。二階建てのログハウスで、一階はみんなでくつろげる広い部屋になっていた。壁際にある階段からは二階に行けて、そこに個室が一人一部屋あるらしい。
この家はボクの自由にしていいんだって。
「つまり……秘密基地!?」
「秘密基地です!」
「おー! テンション上がってきたー!」
「わー!」
『なんだこれ?』
『秘密基地は男の子のロマンだから』
『リオンちゃんは女の子だろいい加減しろ!』
いいよね、秘密基地。言葉の響きだけでテンションが上がる。とても素晴らしい。
「おお! 暖炉まである! すごーい!」
「火つけちゃいましょう火!」
「だね!」
『なんかリオンちゃんの言動が幼くなってるような』
『きっと疲れてるんだよ、察してやれ』
『そっかあ』
それはそれで失礼だと思うな!
早速暖炉に火をいれる。何故かすでに入っている薪にバーバラさんが魔法で火をつけてくれると、ぱちぱちと燃え始めた。部屋がゆっくりと暖かくなっていく。いいね、これ。
「ちなみに魔法の薪です。減りません」
「素晴らしい! さすがアスティ! 褒めてあげよう!」
「わーい」
「リオンちゃん……」
やめてクレハちゃん。そんな生暖かい目で見つめないで。正気に戻りそうになるから。
「もちろん火事の心配もありません! つけっぱなしでおーけー!」
「いいね! いつでも暖かいお家が迎えてくれるってわけだね!」
「ざっつらいと!」
「うざい」
「あれー!?」
『うわあ急に落ち着くな!』
『すんと我に返るのは草なんだ』
おっと、失礼。そんなつもりはなかった。もっとテンションを上げていこう。我慢の限界を迎えるまでは!
「さらに! この秘密基地の所有者であるリオンさんとそのお仲間には特別な部屋が与えられます!」
「ほほう! 特別! どんなかな!?」
「地下室へどうぞ!」
アスティに促されて、地下室へ向かう。部屋の隅に下への階段があった。ログハウスに地下室って……。いや、待て落ち着けボク! いいね地下室! ロマンだね!
そうして、地下室。そこにはたくさんの、ウィンタースポーツの道具が揃えられていた。
「いや、あの……。スノーモービルとかもあるけど、どうやって出すの?」
「手を触れて外に運びたいと念じれば移動します。戻す時も同じです」
「…………」
『落ち着くなリオン!』
『テンション上げていこうぜ!』
『スキーやり放題! 素晴らしい!』
「そ、そうだね! 素晴らしい!」
そうだ落ち着くなボク! 我に返るといろいろと言いたくなってしまう! がんがんいこうぜ!
「では、もう一つのとっておきです!」
「まだあるんだ! 楽しみだなあ!」
『これもうやけくそだな』
言わなくていいよ!
次に向かったのは、外。ログハウスの、裏。そこにあったのは。
「温泉……だと……!?」
温泉だ。それなりの広さで、ボクたち四人ぐらいならかなり余裕がある。ちゃんと体を洗うためのスペースもあるね。
「もちろん……もちろん混浴です!」
「うん」
「つまり……。あらいっこができるわけです!」
「ほう」
「さあリオンさん一緒に入りましょうさあさあさあ!」
「一人で入れクソ女神!」
アスティを温泉に突き落とす。奇声を上げながら温泉に落ちたけど、まあいいでしょ。これで解決だ。ボクたちは秘密基地を確認しよう。
「クレハちゃん、家の中をもうちょっと見よう」
「あ、うん……。いいの? あれ」
「いいんだよ」
「いや、でも」
「いいんだよ」
「あ、はい」
『クレハちゃんを怯えさすなよw』
『よく我慢したよお前は』
『それはそうと秘密基地見ようぜ!』
そうだねそうしよう。アスティなんか気にせずに!
クレハちゃんを連れて、家の正面へと向かう。そうしようとしたところで、背後の温泉から何かが出てくる音が聞こえてきた。何か、といかアスティだけど。びちゃびちゃと。
「にがしませんよぉ……」
『ヒェッ』
『こわいこわいこわいこわい』
『下手な心霊現象より怖いw』
『神霊現象だからな』
『誰がうまいこと言えと』
ゆっくりと、前に歩いて手を伸ばしてくるアスティ。なるほど。
「そいや」
「あふん」
手元にあった桶をぶん投げる。アスティの額に命中して、そのまままた温泉の中に倒れてしまった。
「悪は滅びた。正義は勝つ」
『おいwww』
『それでいいのかリオンちゃんw』
『いいんだよ……きっと……』
そうそう。これでいいのだ。
苦笑いするクレハちゃんを連れて、今度こそログハウスの中に入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます