だって写真が増えていくから
「え」
「あ、ううん。必要ないならいいんだよ? でも、あの……。れすとらん? すごかったから……」
クレハちゃんは、服より食べ物みたいだね。きっと以前姉さんとお買い物に行った時に、ファミレスとかに入ったんだと思う。
母さんの料理も美味しいけど、ああいったファミレスの料理はまた別だ。プロが作る料理ってやっぱり美味しいから。
でもファミレスだけを目的に出かけるのはちょっと億劫というか……。いやでも、だからっていらない防寒着とか……。
「無駄遣いするお金がもったいない。そういうことですね、リオンさん」
「うん。そうだよアスティ」
「ならば! 私にいい案があります!」
「いや待て。ちょっと待て。とてつもなく嫌な予感が……」
「リオンさん写真集第二弾! ダンジョンでのかっこかわいいリオンさんがいっぱい! 今ならお値段千円ぽっきり!」
「なにやってんだクソ女神いいぃぃぃ!」
『祭りだああああ!』
『マジで二冊目来てるぞ!』
『お前ら急げ! リオンが止める前に買うんだ!』
『応!』
「買うなああぁぁ!」
こいつまたやりやがった! ていうか前もそうだけどいつの間に用意してやがったんだ! いやそもそもタイミングよすぎだろいくらなんでも一瞬で準備とか……。前もって、この時間に予約したのかこいつ……!?
「どうやって!? 未来でも見えるっていうのか!」
「当然です。だって女神ですから」
「最強筆頭の能力をくだらないことに使うなバカ!」
『敵の動きを事前に知り、回避攻撃に活かすものなんだけどなw』
『我らが女神様はリオンの写真集のために使います』
『さすが女神様だぜ!』
『一生ついていきます!』
「お前ら普段アスティのことバカにしてるだろ! なんだその連帯感!」
ボクと一緒にクソ女神とか言いまくってるくせに、なんで今日はこうも調子がいいんだこいつら! 写真集か! そんなに写真集がいいのか! マジで意味わからんぞ!
「アスティさん、わたしも見たいです」
「どうぞどうぞ」
「わーい」
「しれっとクレハちゃんに何見せてんの!?」
あれは……まさか、現物、だと!? アホどもが買ってる電子書籍じゃなくて、現物の本だと!? いつの間に、どうやって作ったんだこのカス女神!
「やめ、やめろ! 見るな! 買うな! 広めるなああ!」
「あ……。見ちゃだめ、かな? ごめんね、リオンちゃん」
「あ、え、うぐ……」
そんな、上目遣いに見られると、困る。しかもちゃんと本を閉じて、アスティに返して、しょんぼりしていて……。これは、え、どうしたらいいの?
『正解なんて一つしかないに決まってんだろ』
『なあ、リオン。お前……男だろ?』
『惚れた女の子の我が儘ぐらい聞いてやれよ。な?』
ち、ちが……ボクは男だし、惚れてるわけでもないし……。それに、だって、これは二冊目、さすがにだめなやつ……。
「ごめんなさい」
ぺこりと頭を下げるクレハちゃん。うん。よし。
「許す!」
「え?」
『お』
『まさか』
「買っていい! 見ていい! 好きにしていい!」
「え!?」
『きたあああ!』
『それでこそリオンくんちゃん!』
『そこに痺れる憧れる!』
『まあ真似は絶対にしないんだけどな!』
余計なこと言わなくていいんだよ!
というわけで。正式にゴーサインだ。せめてせいぜい、ボクにお金を貢いでほしい。恥ずかしさも確かにあるけど、別に水着が載ってるわけでも……。
「なお電子書籍特典は、撮りたてほやほやリオンさんの水着写真です!」
「…………」
『リオンちゃんが……凍り付いた……』
『リオンちゃんが死んだ!』
『この人でなし!』
「神ですから」
『なおのこと悪いが?』
いや、うん……。うん。もう、好きにして。
「わあ……。リオンちゃん、すごくかっこよくてかわいく撮れてるよ!」
「クレハちゃんは良い子だなあ……」
「え?」
「なんでもないよー」
『さすがこの配信唯一の良心』
『癒やされるわあ……』
『リオンもアスティもバーバラさんも、なんなら他の家族もだいたいぶっ飛んでるからなw』
その評価に文句は言いたいけど、でもあながち否定できなくて困る。ボクは、ほら。女の子になっちゃってるからさ。
「でもぶっちぎりはアスティだと思う」
『それはそう』
『異論はない』
「写真集消しますよ?」
『お前何言ってんだリオン!』
『アスティ様が一番まともだろうが!』
「君らほんっとうにいい加減にしなよ?」
長いものに巻かれるとか、そんなレベルじゃない。ボクだっていい加減怒るよ。当たり前のごとく。
でも。そう、とりあえず。これで、明日の軍資金はゲットだね。もちろん振り込みは後日だけど、その分貯金から使えばいいから。
ボクの写真で服を買う。いやあ……。最悪だね!
「寝る」
「あら……」
『これは綺麗なふて寝』
『まあ今回はキレても仕方ないわw』
『もうちょっと自重した方がいいよ女神様』
「ですか?」
自覚がないことは分かってる。分かってるけどさ。
もうちょっと、どうにかしてほしいものだね。本当に。
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