宝箱ふぃーばー!
翌日はお休みにしてのんびりして、そしてまた次の日。今日はあの隠し通路を攻略する日だ。
というわけで、今日はあの大岩の前にいます。メンバーはいつもの四人。ボクと、いつもにこにこ不気味な笑顔のアスティ。そして。
「隠し通路……! 楽しみね、クレハ!」
「うん! 楽しみ!」
とてもテンションの高いクレハちゃんとバーバラさんだ。
やっぱり二人も探索者として、こうした未発見の隠し通路はとてもわくわくするものらしい。朝からとても元気だ。
実は昨日からずっと行こう行こうと言われてたからね。見つけられる前に早く、みたいな感じで。地球人と異世界人の熱量の違いと思いたい。
「それじゃあ……開けゴマ」
ボクが合い言葉を言うと、大岩に大きな階段が現れた。以前見た時と変わらない階段だ。こうして見ると、ボクもちょっとテンションが上がりそう。
だって、いかにもな洞窟だ。鍾乳洞。まさにダンジョンって感じじゃないかな。
水の落ちる音とか最高に雰囲気が出てる。とてもいい。
『ぴちょんぴちょんという音が好き』
『わかる』
『洞窟って感じがするよね』
『隠しアイテムとか置いてありそうw』
勇者の剣とか一番奥で刺さってそうな雰囲気がある。歩いていてとても楽しい。
通路はとても広くて、大きな国道ぐらいの幅がある。ただ大きな突き出た岩も所々にあるから、そこに魔物が隠れていたりしたらちょっと危ないかも。
『で、なんでクレハちゃんが前を歩いてんの?』
『お前幼女を先頭にするとかクソすぎない?』
『それでも男かああん?』
「余計なこと言うな!」
特に男のくだり! まだクレハちゃんたちには言ってないんだよ!
クレハちゃんが先頭なのは、罠対策だ。さすが忍者というべきか、クレハちゃんは罠についてもとても詳しい。探索済みのエリアならともかく、こうした未発見の道を行くなら罠に詳しい人に先頭を任せるべきなのだとか。
ボクだってクレハちゃんを先頭にするのは反対だったけど……。さすがにちゃんと理由があると反論まではできなかったよ。
『ほーん。ちゃんと考えてはるな』
『罠とか全然考えてなかったw』
『で、あったの?』
「多分、あったよ」
多分なのは、ボクからすると何をしたのか分からないから。
突然ボクたちを止めてからその場にしゃがんで、しばらくして手招きされて。そういうことが何度もあったから、多分それが罠の解除をしてるんだと思う。仕組みは当然分からない。
ちなみに魔物も何度か遭遇した。半魚人って言えばいいのかな。サハギン。魚が人になったみたいな、気持ち悪い姿の魔物だった。
クレハちゃんが言うには、四階層相当の強さだったみたい。クレハちゃんが引きつけてくれてる間にボクが魔法で攻撃する。その流れが定着してきたかな。
そうして二時間ほど歩いて、危なげなく踏破した。
「ところで、ボクはとても気になってることがあります」
「はいどうぞリオンさん」
「宝箱ってなんなの……?」
「え?」
クレハちゃんとバーバラさんが意味が分からないといった様子で首を傾げてる。異世界の人からすると、ダンジョンに宝箱があるのは当然らしい。
でもさ。これ、意味が分からないよ。あんな豪華な箱に結構いい道具が入ってる。どういう仕組みだと言いたい。
『確かに謎ではある』
『誰が置いて誰が補充してるんだよとは言いたくなるかなw』
『でもな、リオン。こういう時は決まってるだろ?』
うん。ちょっと分かってて言ってる。
アスティに視線を向ける。するとサムズアップして言った。
「そのようにデザインしました」
「デザインしました、じゃないんだよ。どこから出てきてるのあの道具は」
「自然と?」
「なにそれこわい」
宝箱の中に自然と道具が出てくるってどういうことだよ。怖すぎるよ。
クレハちゃんたちはやっぱり疑問にも思わないみたい。この世界でダンジョンの宝箱はそういうものらしい。
ちなみに。宝箱は一定の期間で補充されるらしい。間隔はまちまちで、一週間で補充されるものもあれば、一年経ってようやく、というものもあるのだとか。
だからこそ、宝箱が手つかずの隠し通路は探索者にとって垂涎のものらしいね。
というわけで。サハギンをぺちぺちする以外は、宝箱フィーバーだ。いやまあ、そんなに大量にあるわけじゃないけどね。
「リオンちゃん! 見て見て! 水晶の剣!」
「おー……。綺麗。でもすぐ割れちゃいそう」
「うん……。観賞用かな? 売っちゃう?」
「お待ちください。割れないように魔法を付与しています。頑丈ですよ」
「なにそれずるい」
それ本当に最初から付与されていたの? ボクたちが手に入れたから後出しで付与したんじゃないの? いや、答えなくていいよ。違うと言われても信用できないし。
「これは……水晶のように透き通った……下着?」
『ガタッ』
『ガタッ』
『なんて素晴らしいアイテムなんだ!』
『それは間違い無く祝福された装備!』
『さあバーバラさん装備するのだ!』
「男ものだけど」
『ちくしょうめええええ!』
『邪神! この……邪神! どちくしょう! 俺たちの心を弄びやがって!』
『これだからアスティはアスティって言われるんだよ!』
「そこまで言います? というより私の名前を悪口のように言わないでください」
いやあ……。視聴者さんたちの言いたいことも分からないでもないけど、でもさすがにこれはほっといてもいいと思う。
というより女物だったらどうするつもりだったんだこいつら。さすがに配信できないよ。
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