じゃいあんとうるふ!
お昼ご飯を終えて、さらに草原を進んで。あっという間にボス部屋に到着した。
「知ってた」
本来敵のはずのウルフが一匹も襲ってこないからね! そりゃこうなる……!
「すごく快適な攻略だったわね……」
「うん……。まっすぐボス部屋に来れちゃった……」
クレハちゃんもバーバラさんも、二階層は踏破済み。つまりボス部屋の場所も知ってるわけで。しかもこのダンジョンはボス部屋の場所が変わるみたいな仕組みもないわけで。
敵が襲ってこない上にフロアは広い草原。真っ直ぐボス部屋に向かって一直線。それだけで踏破完了だ。なんだこれ。
「いやまあ、いいか。それよりもアスティ」
「はい?」
「剣をしまえ」
「え」
「え、じゃないんだよ!」
しれっと剣を抜くな! またボスを瞬殺するつもりだっただろ!
「確かにアスティはパーティメンバ―だよ? でも少しぐらい、こう、攻略っぽいことをさ……!」
「仕方ないですねえ……」
「今のボクの発言に譲歩が必要なものあった?」
『もはやただのダンジョン観光配信だからなw』
『攻略の参考にできないw』
『どんなモンスターがいるか分かる、というのは大きい……かも?』
それぐらいしかないとも言える。
ともかく。ようやくまともな攻略だ。もちろん痛いのは嫌だけど、手加減とかしなければすぐに終わる……はず。いやこれを思うとボクも結構我が儘だな……。
ボス部屋は結構大きな洞窟だ。地下に続く階段が草原の中にぽつんとあって、そこを下りるとボスが待っていた。
ボスは、大きなウルフ。その名をジャイアントウルフ。そのまんま。
「でっかいわんこだなあ……」
「リオンちゃん、アスティさんに毒されてない?」
「はっ!」
そうだわんこじゃないよボスだよ。一応は人を殺せる危険なモンスターだよ。
『たまに思考がアスティっぽくなってる気がする』
『大丈夫? 邪神の思考だよ?』
『毒電波でも発してんのか、あの邪神』
「そこまで言います?」
そこまで言うことだよ。ボクもちょっと冷静にならないと。
よし。よし。大丈夫。ボクは冷静だ。
「それじゃあ……。どうやって倒せばいいかな」
「そうね……。まずは前提として、あの大きなウルフは近づかないと襲ってこないのだけど……」
「なんかゲームっぽい」
「余計なことは言わなくていいから」
思ったことをつぶやくとバーバラさんに注意されてしまった。ごめんなさい。
「それでね」
「うん」
「ここから全力で魔法を使ってもらっていいかしら。もちろん襲ってくるけど、その時はクレハが対応するから」
「うん? まあいいけど」
先制攻撃は大事だからね。まずはできるだけHPを削る。鉄則だね。
それじゃあ、早速。杖を構えて……。今回は、気合いを入れていってみよう。
「マイナファイア!」
ボクがそう叫ぶと同時に、業火が大きなウルフを呑み込んで。
悲鳴が、断末魔の悲鳴が響き渡って。
後に残されたのは大きな魔石でした。
「…………。ええ……」
「予想通りね」
「おい」
『しってた』
『正直バーバラさんがこの提案をした時点で察しはついてた』
『改めて思うけどやばい魔法すぎるだろw』
本当だよ。さすがにボスを瞬殺とは思ってなかったから。
「ちなみに、ボスのウルフには魔法への耐性があるから。普通に戦うとこうはいかないわ」
「へえ」
「でも基本的にはウルフだから、前衛でしっかりと戦いながら、隙を見て高火力の魔法を叩き込む、もしくは前衛をサポートする、で大丈夫よ」
「だってさ。みんな覚えた?」
『おk』
『これで俺たちもウルフ討伐ができるな!』
『やったぜもふもふパラダイスだ!』
『なお未だ最初のヒュージスライムが攻略できてない模様』
安全第一でやった方がいいだろうから、ゆっくりでいいと思うよ。ゴブリンからは誰も助けてくれなくなるわけだしね。
「それにしても……。あっさりと攻略できちゃったなあ……」
「とってもすごいよ、リオンちゃん。わたしが最初に来た時は、攻略まで一ヶ月かかったから」
「それは、まあ……」
クレハちゃんの場合は手探りだろうからね。どんな敵か、ぐらいは情報として知ってたかもしれないけど、ボス部屋を探したりとかは独力だったろうし……。
それに、今回はクレハちゃんたちの案内で一直線だったけど、このフロアそのものはとても迷いやすい構造だ。見渡す限りの草原だから、どこに何があるかもよく分からない。
それを考えると、一ヶ月というのは決して長い時間じゃないと思う。
「むしろこんな楽していいのかな……」
「リオンさんはこんな場所でちんたらやってる場合じゃないんです!」
「ちんたら言うな」
もうちょっと言葉を選べよバカ女神。
「まあでも、そろそろ終わりにしましょうか。三階層だけ覗いて帰りましょう」
バーバラさんの提案に、ボクは頷いてから階段を下りた。
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