はじめてのぱそこん!

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新章?です。そのうち章分けします。

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 せっかくだから、ボクが好きなものをクレハちゃんたちにも教えたい。そう思ったボクは悪くないと思う。


「はいしん?」

「そう」


 自分の部屋のパソコンのスイッチを押す。ボクの後ろには、クレハちゃんとバーバラさん。二人とも、興味深そうにパソコンを見つめてる。

 実はずっとこの機械に興味があったらしい。テレビは見ても、このパソコンの説明はほとんどしなかったから当然かもしれない。


「パソコンってすごくてね。たくさんのことができるんだ。書類を書いたり、表を作ったり、調べ物をしたり、いろいろ」

「へえ……」

「これがあればギルドの仕事も楽になりそうね……」


 多分楽になるけど……。自然とそれが出るあたり、バーバラさんの本業、探索者じゃなくてギルドの受付になってない? 大丈夫? そっちの方がいいとは思うけど。


「で、ボクがこれで何をしているかっていうと、ゲームと配信なんだ」

「ゲーム?」

「ぴこぴこのことですよー」


 そう言うのはアズティ。ボクの部屋の隅で携帯ゲームをしてる。この女神、俗世に染まりすぎでは?


「ぴこぴこ。楽しいよね」

「うん」


 クレハちゃんもゲームは何度もしていて、結構楽しそうだった。アクションゲームが特に好みらしいけど、RPGも好きみたい。

 それはともかく、配信だ。


「配信っていうのは、簡単に言ってしまうと自分が何をしているかをいろんな人に見てもらうことかな」

「それは……楽しいの?」

「楽しいよ。少なくとも、ボクは」


 一人でゲームをやるよりも、みんなでわいわいやった方が楽しいから。


「とりあえずやってみるね」


 ということで、早速配信ページに移動して、カメラを調整して配信を開始。するとすぐに、画面にボクたちの顔が映って、そしてコメントが流れ始めた。


『きちゃ!』

『まってた!』

『おお、クレハちゃんもこっちを見とる!』


 最近は配信直後から人が来る。そんなにがっつり見ても、ダンジョンの新情報なんてあんまり出ないと思うよ。


「これが、コメント。これはね、世界中の人がボクたちを見て、発言してるんだ」

「世界中?」

「そう。世界中」


 ところどころ英語のコメントもまじってるし、世界中と言っても過言じゃないはず。


「世界中って……、え? 本当に?」

「本当だよ。今この配信は、世界中の人が見てる。街とか国とかじゃなくて、世界の人が」


 クレハちゃんは何度か目を瞬かせて、まじまじとパソコンを見て。そうして、ごくりと息をのんだ。とてもすごいものだと思ったらしい。

 現代人にとってはもう当たり前のものだけど……。やっぱり、異世界の、文明がそこまで発達してない世界の人からすると、これはすごいものなんだね。


「この世界の忍者は大変そうだね……」

「あー……」


 忍者。スパイ、なんてものはやっぱりいるみたいだし……。昔と違って、今はかなり大変だと思う。どこに情報があるかも分からないし、どこから情報が漏れるかも分からない。

 そう思うと、スパイの人たちも大変だ。


「でも今は違う方面で見てほしいかな?」

「違う方面?」

「うん。世界中の人とお友達になれる。そう思ったらすごくない?」

「それは……すごい、と思う」

「うんうん」

「ともだちが、よく分からないけど……」

「…………」


『おもたーい』

『やっぱり忍びの里ってそんなんなのかな』


 そうなのかな。もしそうだとしたら、それはちょっとつまらないと思う。

 でも。いやだからこそ。やっぱりクレハちゃんには楽しんでもらいたい。


「クレハちゃんって、将棋をやるんだよね?」

「え? うん」

「結構強いよね?」

「えっと……。そう、かな?」


 比較対象がボクたち家族しかいないから分かりにくいけど、アスティが言うにはあっちの世界でもかなりの腕前らしい。少なくともボクだとまったく相手にならないほどに。

 だからきっと、あまり楽しめてなかったと思う。でも、インターネットなら。


「というわけで、将棋配信だ!」


『マジかよwww』

『まさかリオンの配信で将棋とか見ることになるなんて』

『もしかして明日あたり世界が滅ぶの?』


「そこまで言う?」

「滅ぼしましょうか?」

「アスティはだまってろ」

「ぴえん」


『ぴえんなんて久しぶりに聞いたぞw』


 ずっと黙って見守っていたのに、口を開くとこれだ。アスティはずっと黙っておくべきだと思う。

 ささっと配信の設定をいじって、将棋を遊べるページを開いて、対戦を選択。ランクとかがないフリーの対戦だから、相手の強さは選べないけど……。きっとそのうち、強い相手も出てくるはず。

 というわけで。


「はい、クレハちゃん」

「う、うん……」


 パソコンでのコマの動かし方だけ教えて、あとはクレハちゃんにバトンタッチだ。きっと楽しんでくれるはず。


「お願いします……?」


 クレハちゃんは少し緊張しながらも、歩を動かした。

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