かっとなってついやっちゃったんだぜ!
クレハちゃんを見ると、今にも泣きそうな顔だった。
「ごめんね、リオンちゃん……。もう知ってると思ってたから……。その、パーティは、解消で……」
「クレハちゃん。今も狙われてるの? ゆっくり寝れてる?」
「え? えっと……。たまに?」
あ、これ、寝れてないやつだ。目の下のうっすらと見える隈はやっぱりそういうことらしい。
うん。よし。なるほど。
「アスティ」
「はい」
「ボク、クレハちゃんのこと気に入っちゃった」
「はい」
「だから拉致します」
「はーい」
「え」
にっこり頷くアスティと、困惑するクレハちゃんとバーバラさん。
とりあえずまずは。
「お家に連行だー!」
「いえーい!」
「えええ!?」
「な、なに!?」
混乱する二人の腕を掴んでアスティに目配せ。アスティはぐっとサムズアップすると、クレハちゃんたちも含めて転移してくれた。
というわけで、帰ってきましたボクの部屋。一緒にいるのはいつもの女神と唖然とする異世界組二人。
うん。よし。
「かっとなってついやっちゃったんだぜ」
『おいwww』
『だが許す!』
『小さい子が寝不足だなんてかわいそうだからな!』
そうそう。これも人助けです。
さて。クレハちゃんとバーバラさんは、部屋を見回して口をぱくぱくとさせてる。異世界ではまず見ないものばっかりだから、当然の反応、になるのかな?
「リオンちゃん……。ここは、どこ……?」
「ボクの家。ボクの部屋。そこに窓があるから、外の景色をご覧ください」
「う、うん……。…………」
あ、クレハちゃんが窓の外を見て固まってしまった。その隣ではバーバラさんも口をあんぐりと開けて凍り付いてる。
ダンジョンのあの街と比べると、かなり様子が違うと思う。ここは都会というほどではないけど、それでも少しは高いビルもあるし。あんな高い建物は、あっちにはないんじゃないかな。
いや、どうなんだろう。ダンジョンの外にはあったりするのかな。
「リオンちゃん」
「うん?」
「あの高い建物は……なんですか……?」
「なんで敬語……? あれは、ビル。三階までは商業施設で、あとはオフィスだったかな?」
「はあ……」
これはよく分かってないやつだ。でもクレハちゃんは好奇心が勝ってきたみたいで、窓からの景色を食い入るように見つめてる。たまに下に視線を向けて、首を傾げて。武器を持ってない、なんてつぶやきも。日本で武器を持ってたら捕まるからね……。
「リオンちゃん」
バーバラさんがボクに向き直っていた。その顔は、今まで見たどんな顔よりも真剣だった。
「単刀直入に聞くけど……。ここはどこで、あなたは何者?」
「うん……。どうしようこれ」
『おいwww』
『無計画かよw』
『俺らが聞きたいわw』
いや、本当に。さすがにやりたい放題してしまった気がする。これは、ボクもアスティのことを悪く言えないかもしれない。
いやでも、ボクはまだ誰にも迷惑をかけてない、はず。きっと。多分。めいびー。
「ここは異世界で、ボクは異世界人です」
ごまかしても通じない気がするし、何より嘘をつくことで信頼を裏切りそうだったから素直に答えることにした。信頼関係があるかは分からない。
「異世界……?」
「そう。異世界は分かる?」
「架空の物語とかにはたまに見かけるけれど……」
『マジかよ異世界にも異世界のお話あるのかよ』
『異世界で異世界のお話を読んで異世界について話すんですね!』
『異世界がゲシュタルト崩壊起こしそう』
なかなか不思議な状態だ。でも、説明の手間は省ける。
「ここはボクの世界で、バーバラさんたちの世界とは全く違う世界になる、らしいよ。だからここなら安全ってことです」
「らしい?」
「いや、実はさ……」
隠しても仕方ないので、バーバラさんにここまでの経緯を話すことにした。こっちに意識を戻してくれたクレハちゃんにも説明。なお性別については言わないでおく。
パソコンとかはよく理解できなかったみたいだけど、それでもふわっとした感覚である程度は理解してくれたみたい。ボクの説明を聞き終えたバーバラさんは、アスティを見て言った。
「邪神じゃないの……!」
『草』
『異世界人からも邪神判定w』
「ひどくないですか!?」
『妥当なんだよなあ』
ダンジョンの封鎖はある程度解除されたとはいえ、いやむしろ解除されたからこそ、まだまだ日本は混乱してる。ニュースをかけるとダンジョンの話がめちゃくちゃ多いみたいだし。
クレハちゃんまで頬が引きつってるからよっぽどだと思う。すごく優しい子なのに。
「えっと……。それで、リオンちゃん。どうして私たちをここに連れてきたのかしら」
「え? いや、ゆっくり休んでもらおうかなと思って」
「ええ……。うん? それだけ?」
「それだけだよ?」
むしろそれ以上はない。求めることがあるなら考えるけど。
いや、うん。改めて自分でも思うけど。
「ボク計画性なさすぎじゃない?」
『それな』
『前々から思ってました』
『今回はかなり極まってるけどな』
だって、ずっと追われてるなら今もろくに寝れてないと思ったら、放っておけなくて……。だからボクは悪くないと主張したい。だめかな?
「考えても仕方ないか。もう連れてきちゃったしね。というわけで、何か食べ物取ってくるよ」
そう言って三人を残して、ボクはキッチンに向かった。買い置きのお菓子が確かあったはず。何を持っていこうかな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます