リオンは公共の財産です
帰宅して、配信。なお配信タイトルは愚痴配信だ。もちろん内容は、今日のお買い物にについて。
「愚痴らせてほしい」
『どうした急に』
『目撃情報とかめちゃくちゃ上がってたぞ』
『デパートの屋上にいきなり転移するのはあかんやろwww』
「ボクもそう思う」
家に帰ってから、改めて思ったよ。こいつらめちゃくちゃやってたな、と。そもそもボクはこいつらのおもちゃじゃないのに、人形扱いだし。これは視聴者からも怒ってもらわないといけないと思うんだ。
「アスティも姉さんも、ボクを人形扱いするんだ。ひどいよね?」
『どういうことだってばよ』
『ヒント、デパート、女三人』
『着せ替え人形ってことかな?』
『なんてことするんだ女神様! 俺たちも見たいのに!』
いやそっち!? もうちょっと、ボクにも寄り添ってくれないかな!
「君たちボクの視聴者でしょ? ボクに味方してよ」
『もちろんリオンちゃんの味方です』
『それはそれとして、かわいい服を着るリオンちゃんが見たいです』
『それはそれ、これはこれ、というやつさ』
「この世には神も仏もいないのか……!」
「神ならここにいますよ?」
「黙れ元凶!」
神がろくでもないからボクがこんな目に遭ってるんじゃないか! 正直ダンジョンもなんかあんまり楽しくないし……! ちくしょう!
「ところでアスティ、何やってんの?」
アスティはスマホを器用に使って何かをしてる。スマホも使えるとか、なんか女神っぽくないよね。ところでそのスマホはボクのスマホでは……?
「できました!」
ぴろん、と配信画面に何かが表示された。コメントにURLがある。なんだろう、とても嫌な予感がする。
「いろんな服のリオンさん写真集! 今なら一冊千円! ダウンロード販売のみ受付中!」
「何やってんだクソ女神ぃぃぃ!」
嘘でしょ!? 冗談だよねまさかそんなこと本当にやるわけ……。
焦りながらURLをクリック。表示されたのは、書籍のダウンロード販売サイト。そして、表示された本の表紙は、ボク。
「あああああああ!」
『草』
『マジで売ってるwww』
『そっこーで購入しました』
『ありがとう女神様!』
『神はここにあった……!』
「買うなああぁぁぁ!」
ちょ、すごい勢いで販売数が増えてる!? 本当に何やってくれてんだこの邪神!
「アスティ! これはさすがにだめ! ライン越えだよ!」
「かわいいリオンさんの布教活動です」
「ボクに許可なくやることじゃないよね!? 肖像権って知ってるかな!?」
「もちろん売上げは全額リオンさんに差し上げますね!」
「差し上げますね、じゃないよそれ以前の問題だよ! ボクの! 人権を! 守って!」
「え? リオンさんって公共の財産では?」
「勝手にみんなの所有物にするなバカ!」
ああ、だめだ、なんかいつの間にか一万も販売されてる……。
いや、待って。一万?
「販売数、一万……」
「はい」
「単価、千円……」
「はい」
「売上げは……一千万……?」
「ですね。もちろん手数料があるのでまるまる入ってくるわけではないですけど、数百万はリオンさんに入ります」
「…………」
ひゃくまん。ドラマで見るような、あの札束。あれが、いっぱい。いっぱい。
「…………」
「…………」
「…………。許す!」
「わあい」
『それでいいのかw』
『所詮この世は金ってことかw』
『見える、見えるぞ、目が円マークになってるリオンちゃんが!』
なんとでも言えばいいさ! 正直この体になった以上、まともな就職なんてできるとは思ってない。だから、稼げる何かがあるなら、喜んで受け入れるとも。
お金! お金は全てを解決する!
「ふへ、ふへへへ……大金だあ……」
「うえへへへ……リオンさん、かわいい……」
『だめだこいつら、早くなんとかしないと』
『手遅れでは?』
うん……。よし。そろそろいいかな。怒りも落ち着いてきた。いや大金が手に入る時点でもう落ち着いてるんだけどね。
「ところでだけど」
『うわあ急に落ち着くな!』
『様式美』
『はい続けてリオンちゃん』
「う、うん……」
こいつら、ネタに走らないと死んじゃう病気でもあるの?
「投げ銭が解禁されました」
『なん、だと……!?』
『てか今まで解禁されてなかったのかw』
『過疎配信だったからなあ』
そうなんだよね。正直ボクも気を紛らわせるための配信だったし、それでもよかった。
でもこうして少しでもお金を稼げる手段を得たのなら、利用しない手はないと思う。登録者数一千万とか意味不明な数字になってるし。なお外国人もかなり多いみたいです。英語のコメントとかあるしね。読めないから拾えないけど。
「それにしても、申請から認可まで一日だったんだけど……。アスティ、何かやった?」
「ひゅー」
「口笛吹けないんだ……」
まあ、いいけど。これについてはボクの害にはなってない、むしろとてもありがたい部分だから。
「ようやくまともに役に立ったね、女神様」
「ひどくないですか!?」
『残当』
『むしろかなり甘い評価してくれてるよこれ』
『女神様は反省して?』
「なんで……!?」
自分の胸に手を当てて考えてほしい。神に人の心なんて分からないと思うけど。
「ともかく、適当にお金をください。お金が入る限り、ダンジョン配信を続けます」
とりあえず、家族含めて養える金額を稼げたら嬉しい。可能なら、だけどね。
「次のダンジョン配信は二日後。新しい仲間を紹介してくれるはずだけど……。どんな子かな」
『そういえばそんな話もあったな』
『新しい仲間楽しみ!』
『リオンがちゃんと会話できるのか楽しみw』
「嫌なこと言わないでよ……」
正直かなり不安だ。初対面の人と話すのはちょっと苦手だから。
でも、どんな子が来るのかは、それはそれで楽しみ。ギルドの人が紹介してくれるほどだから、きっといい人、だよね。
「アスティの天敵がいいなあ」
「ひどくないですか?」
全然ひどくないよ。
その後はのんびりと、雑談を続けていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます