今度こそ登録
お姉さんに紙を一枚もらう。いわゆるA四用紙ぐらいの大きさだ。そこに名前、性別、年齢、何ができるかを書くようになっていた。
特に何ができるかを書く欄がとても大きい。それだけ重要視されてるんだと思う。
えっと……。名前は、リオン。性別は、男。年齢は、十六……。
「リオンさん」
「きゃあ!?」
いつの間にかアスティが真後ろに立っていた。やめてほしい。普通にびっくりした。変な声が出た。めちゃくちゃ恥ずかしい。
『きゃあwww』
『もう完全に女の子だなリオンちゃん』
『そんなかわいい悲鳴が聞けるとは思わなかったw』
やめてほしい。予想以上に恥ずかしいから本当にやめてほしい……!
「それで、アスティ。なに?」
「いえ、今のリオンさんの見た目で男十六歳は無茶があります」
「誰のせいだよ誰の……!」
「リオンさんの願いのせいです!」
「な、ん……! 言い返せない……!」
確かに女の子になってみたいと思ってたけど! 思ってたけどさあ……!
よし。よし。落ち着けボク。ここで怒ってもきっとアスティを喜ばせるだけだ。ボクは冷静な子。とってもすごい子。くーるになれ。くーる。
「ふう……!」
「はいどうぞ」
「ちょ!?」
気付けばアスティがお姉さんに登録の紙を渡していた。おい。
「はい、確かに。えっと……。リオンさん。女の子で、十歳。得意なものは、魔法と。とてもすごい魔法が使える、と書かれていますけど、具体的には?」
「ヒュージスライムをファイア一発で消し隅にしましたよ!」
「な……!」
お姉さんが絶句してる。周りの、特に魔法使いみたいな人たちも息を呑んだのが分かった。
「それは……素晴らしい。中級以上の魔法使いですね!」
「いや、まって、ちが……」
「それで、お姉さんは……」
ああ、だめだ。ボクの声が小さすぎて流されてしまった。とても悲しい。
「アスティさん。女性、十六歳。なんでもできる……。なんでも、とは?」
「なんでも。剣も槍も弓も拳も魔法だって使えます」
「魔法まで使えるんですか……」
それ本当に魔法なの? 神様だけが使える別の何かじゃないの?
言いたくなったけど、我慢。ボクだけじゃなくて、他の人にも判別なんてできないだろうから。
とりあえず探索者登録は終了。その後に小さいカードを渡された。免許証みたいなカードだ。そこにボクの情報が魔法で登録されているらしい。今ボクが触れたことで魔力が登録されて、ボク以外はこのカードが使えないんだとか。無駄にハイテク。
『異世界ギルドあるある』
『どんな技術だよと言いたいけど、この女神だしな』
『絶対何かやってるだろこの女神』
ボクもそう思う。視線を向けるとあからさまに逸らされたし。
「このカードがあればギルドで依頼を受けられます。街の人の困り事を解決したり、ダンジョンの奥で素材を集めたり、ですね。ダンジョンに進むのもカードが必要なので、なくさないでください」
「分かりました……。ありがとうございます」
「はい。ところで、リオンさん。次はいつダンジョンに潜りますか?」
ん? どうしてそんなことを気にするんだろう。正直、かなり悩んでるけど……。でもダンジョンにはやっぱり潜ってみたい。アスティが言うにはボクは安全らしいし、後から来る人のためにも少しでも情報は集めた方がいいと思う。
でもとりあえず、異世界の人の仲間も欲しいかも。ボクの魔法はちょっと危なすぎるから……。
ボクがちょっと考えていると、お姉さんが遠慮がちに言った。
「よければ、紹介したい子がいるのだけど」
「え?」
「将来有望な女の子だから、きっと仲良くなれるわよ」
女の子……。女の子かあ。
『おにゃのこの仲間!』
『ええやん! 花が増えるね!』
『いやでもマジで言うけど、受けとけ。引きこもりのお前が仲間なんて見つけられるとは思えないから』
『火の玉ストレートはやめるんだ!』
ひどくないかな? 否定できないのが悲しいけど。
「分かりました……。紹介、お願いします」
「はい、承りました。ここに集合でいいかな? いつがいい?」
「えっと……。三日後で、お願いします」
とりあえず、気持ちを落ち着かせる意味もこめて、ね。あと、それぐらいにはもうちょっと、国の方でもダンジョンに対する扱いがはっきりするかもだし。
「はい。じゃあ、三日後の朝に、ここで。いいかな?」
「大丈夫。お願いします」
「お願いされました」
そう言ってお姉さんは笑って、そして言った。
「きっとそこの変な人からもある程度は守ってくれるから」
「…………」
これさっきのやつマジで受け取ってくれてたやつだ……! ありがとうございます! でも女の子に守られるのが確定でちょっと悲しいです!
『女の子に守られる高校生男子がいると聞いて』
『ばっかお前、今はリオンちゃんも幼女だから』
『どんな子か楽しみやな!』
うん……。うん。そうだね。楽しみだ。今はそういうことにしておこう。
お姉さんに手を振って、ギルドを後にする。ギルドを出てから、さっきまで黙っていたアスティが言った。
「楽しみ、ですね?」
あれ、なんだろう。ものすごく、こわいよ……?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます