第4話関係者
変死体で発見された、立神昇は寺前邦郎と同じデパートで働いていた事が分かった。
寺前邦郎は、居酒屋「まさき」の女将・平岡厚子の実兄であった。
それから、当時、立神、寺前と松本健一が同僚だった事も調べが付き、聞き込みで小林クリニックの患者でもあった。
3人の関係性はバラバラだが、立神昇との関係は持っていた。
先ずは、平岡厚子に話を聴く事にした。
黒井川は1人で、「まさき」に向かった。
店内では、夫の利樹と2人で仕込みをしたいた。
「すいません。黒井川です。女将さんちょっと良いですか?」
と、言うと、
「刑事さん、お疲れ様です。何の御用でしょうか?」
と、言ってエプロンを脱ぎ、店の端のテーブルに、2人は腰掛けた。
利樹が2人に冷たい麦茶を出した。黒井川は、ありがとうございます。と言った。
「厚子さん、貴方には寺前邦郎と言うお兄さんがいらっしゃいましたね?」
「……はい」
「その、寺前邦郎さんと昨日亡くなった立神昇さんと同じデパートの経理課でした。何か、トラブルはありませんでしたか?」
黒井川は麦茶を一口飲んだ。
「あ、兄は勤務先のデパートの売り上げを横領して、それがバレて懲戒免職でそれを苦に自殺しました。でも、立神昇さんの話しは初めて聞きました。それが、何か?」
と、厚子は黒井川に小さな声で呼びかけた。
「いえいえ、確認です。ありがとうございました」
「えっ、もう良いんですか?」
「はい」
黒井川は、厚子と板場の利樹にお礼を言って店を出た。
その足で、松本健一の働く三幸デパートに出向いた。
「で、私になんの御用ですかな?刑事さん」
松本は、応接室のソファーに座っている。その正面に黒井川は腰掛けた。
「単刀直入に言います。あなたは、10年前に村越デパートを退職されていますね。立神昇と同じ経理課でしたね」
「はい。アイツは自分のミスを私になすりつけ、解雇されました」
「ミスとは?」
「言いたくないです」
「そうですか。分かりました。こっちで調べます」
と、黒井川が腰を上げると、
「刑事さん。使い込みの共犯にされたんだよ。同僚はそれが原因で自殺したんだ」
「寺前邦郎さんですね」
「そうです。寺前邦郎さんです」
「分かりました。また、後日、他の刑事が聞き取りに来ますが、宜しくお願いします」
と、黒井川は去った。
タクシーに乗り、小林クリニックに向かった。時間は2時。3時半からの午後診前に到着した。
「受け付けの女の子に、黒井川は要件をはなした」
すると、看護師が診察室を案内した。
小林千紗は、白衣を着て何やら書き込んでいた。
「あっ、刑事さん。今日は何の用事?」
「ちょっと、先生に伺いたい事がありまして、あなた、寺前邦郎さんをご存知でしたね?」
「……寺前……あっ、うつ病の患者さんです」
「何か寺前さんから、言われませんでしたか?」
「いいえ。聞いていません」
「山田貴子さん、岡田純一さんみたいな、お酒を飲むお友達にはなって居ませんでしたか?」
「いいえ」
「分かりました。お忙しい中、ありがとうございます」
「えっ、これで良いの?」
「はい」
黒井川はタクシーで帰った。この3人は何かを隠していると考えていた。
難しい事件となった。
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