第5話 Open sky dungeon game
ノーザン州ノースアース市。
通称ノース市。
セントラルパーク社が開発した仮想空間の世界に存在する街の名前である。
南北東西にそれぞれ大きな主要都市が存在しノーザン州ノースアース市は北の主要都市として多くのプレイヤーから親しまれ利用されている。
厳密には中央都市『王の庭(King gaeden)』も存在するが普段は立ち入ることができずイベント時のみ解放される限定エリアとなっている。
ノース市は年間を通して五度から十度程度であり寒い地域に分類される。
ただし本日の天気は晴天で無風と薄着でちょうどいいぐらいの天気となっていた。
ログイン時に各地域の天候確認と予め任意で登録した地点さらには服装を選んでログインできる仮想空間は案外心地良く快適な空間だったりする。
大空からの返信を待つ間、特にやることがない野崎と田村。
二人はゲームにログインしてそこで時間を潰すことにした。
ログインするとすぐにある光景がすぐに視界に入って来た。
最近ノース市のプレイヤーを中心に再流行しているOpen sky dungeon game(通称:OSDG)と呼ばれる対戦型のダンジョンゲームだ。
繫華街を歩いていればすぐ目につく場所にあり、商業施設のビル一階に存在する。
多くの観客たちに囲まれて対戦しているのは若い女の子とイケメン親父風の男。
十代中頃の女の子はピンク色の髪が特徴的で一見大人びている。
対戦相手の男は短髪黒髪と一見普通。
だけどゲームの腕前は見る限り本物のようだ。
ダンジョンマスターの親父が冒険者としてやってきた女を妨害する。
逆に冒険者は妨害を避けてゴールする。そんなシンプルなゲームだ。
ただしダンジョンギミック専用の戦闘機と言った武装兵器が冒険者の行く手を阻むことからダンジョンマスターの方がどちらかと言えば有利なように設計されている。
そこで勝負をフェアにするため冒険者側には最大三回の攻略チャンスが与えられるのが一般的なルール。
ビルに用意された巨大ディスプレイに映し出されたライブ映像と聞こえてくる声からも優勢なのは親父らしい。
勝負は三本勝負で親父の方に〇が二つ。
女の方は既にリーチを掛けられ苦戦しているらしい。
「凄い盛り上がりだな~……平日なのに……皆ニートか?」
「普段そこまで盛り上がるようなゲームじゃないしなんかのお祭りかな?」
常識人なら今日が祝日とすぐに出てくるだろう。
だが年中無休で不登校とダンジョン攻略を仕事として行う野崎と田村は既に曜日の感覚が一般人の物とは違う物に変わっていた。
足を止めて暇つぶしを兼ねた観戦をしていると一人の女に声を掛けられる。
「OSDGの大会今やってるんだけど参加していくかい?」
首からスタッフと書かれたネーム札を付けた四十代前後の女性。
金髪ロングヘアーで明るい表情と声の持ち主の彼女は二人を見て微笑んでいる。
「えっ? いや俺たちはいいよ」
「そう言わずにさ。ね? お願い」
「どうする?」
「まぁ、私はいいけど? これ二人で参加できます?」
「当然さ! なら行こうじゃないか!」
野崎と田村の背中を押してやや強引ではあるが案内する女性。
途中、元気のよい女性は説明を始めた。
「OSDGノース最強の親父の連覇を止める為に立ち上がった娘ももうじき負ける」
「へぇ~」
会場の盛り上がりとは対極的に乗り気じゃない男の返事は盛り下がっている。
「娘も他のジャンルなら実力者だけどOSDGは全然ダメでね~」
「それで?」
「私の愛娘の仇を取ってくれ!」
「「はぁ!?」」
今さらOSDGとかやる気でね~と内心思い半分近く寝ていた野崎の心が目覚めた。
それは隣を歩く田村にとっても衝撃だったらしく。
雷に打たれたような衝撃は全身を駆け巡り二人の興味心を揺れ動かす。
お構いなしに女は続ける。
「お嬢さん揺らすのはおっぱいだけにしときな♪」
「よ、余計なお世話ですぅ!!!」
顔を真っ赤にした田村が両手で揺れる胸を隠すように覆う。
「意識しちゃって可愛いね~」
「…………」
遂に黙る田村に女は満足気にくすくす笑う。
「まぁ~揺らせるほどあることはない者からしたら羨ましい限りだよ」
自虐なのか皮肉なのかはわからない。
全体的に痩せていてスレンダーな女は慎ましい胸を二人に見せつける。
服越しでもやはり田村と比べたら明らかに小さい。
「それ褒めてます?」
えっちな視線で物を確認して言う女は。
「当然さ! 愛娘に負けない所を見るとD? E? ぐらいあるんじゃないかい?」
自信満々に言う。
どうやら目利きには自信があるらしい。
「もうその話はいいです! それよりさっきの続きはなんなんです?」
「んっ? その様子と乙女の秘密って所を見るとムフフっいいじゃないかぁ~青春してんだねお嬢さん♪」
「胸の話じゃなくて!」
「おっぱいの話?」
「ちがぁーう! それどっちも同じでしょうが!」
客観的に見た二人の様子は。
女は楽しそう。
田村は羞恥心にムキになっている。
それが野崎の感想だった。
本当は会話に入りたかったが田村の圧に負けて見ているだけのビビり。
「あはは~。でもぉ~もう着いちゃったから事後でいいかなぁ~?」
「「えっ? ……まじ?」」
「『SOCIUS』なら余裕でしょ! お母さん応援してるから頑張ってね~」
「「誰がお母さんだぁ!!!」」
――と、二人の背中を
正体を知っていた自称お母さんになんか違和感を感じるもここでの言及は意味がないと野崎は自分の直感を信じながらも今は隠しておくことにする。
案内される最初から最後まで上手い具合に手のひらで踊らされていたと知った二人はため息を吐いてから、負けて落ち込んでいる少女の隣に行き、特に意味はないが、
「お前の仇取ってやるよ。気になることもあるし」
「よく頑張ったね。あとはお姉さんたちに任せて」
――慰めの声を掛け、挑戦者の壇上に上がった。
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